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Text by 小川顕太郎
2006年05月08日(Mon)

憂國
憂国, 映画

 DVDにて映画『憂國』を観る。これは三島由紀夫の小説を映画化したもので、主演・監督・脚本・演出らを全て三島がやつてゐるといふ三島ファン必見の映画である。が、三島の死後、瑤子夫人の意志によつて全てのフイルムが焼却されてしまひ、幻の映画といはれてゐたものである。私も昔から、雑誌などでこの映画のスチールなどを眺めては、「ああ! 観たかつた!!」と溜息をついてゐたものであるが、なんと! 瑤子夫人の死後、家にネガが残されてゐたのが発見されたのである。

 そして、めでたくDVD化。私も早速購入して、なにはともあれ観てみた、といふ次第である。

 映画は白黒。能舞台のやうな所で、三島と鶴岡淑子の二人のみで演じられ、セリフは一切無し、音楽はワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』が終始流れてゐるといふ、象徴劇スタイル。60年代のアートフィルムの匂ひがプンプンとした映画であつた。切腹のシーンなどやはり強烈で、本来なら私はかういつたシーンはなるべく観ないやうにしてゐるのだが、この映画ではこのシーンを観ないと意味がないので、ま、三島ファンの一人として頑張つて観てみましたー。うう、気分が悪い……。

 いや、ま、改めて三島ッて偉い! と思ひましたよ。なんていふか、こんな映画撮るなんてねェ。そして実際、この後、ホントにこれをやつてしまふんだから。苦しみながら腹を切つてゐる(もち演技)三島を観ながら、ああ、ホントにこんな風に腹を切つたんだなァ、と感無量。当時観るのと今観るのとでは、かなり感触が違つてゐるのではないでせうか。

 あと、個人的に気になつたのが、この映画ではセリフがない代はりに、巻物に毛筆で説明が書かれたものが写るのですが、この文章に仮名遣ひの混乱がかなりみられたこと。この文章もたぶん三島が書いたのでせうが、新かなと歴史的仮名遣ひが結構チャンポンになつてゐる。三島は最後まで歴史的仮名遣ひを守つた人のはずですが、うーむ、これは一体…。

 とにかく、念願叶つて『憂國』を観ることができ、つくづく生きてゐて良かつた、と思ひましたー。

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