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Text by 小川顕太郎
2006年04月28日(Fri)

『トム・ヤム・クン!』について
映画

 ババさん来店。私が「『トム・ヤム・クン!』観ましたよ!」と勢ひ込んで言ふと、「あ、観たんですか」と素ッ気ない答へ。あれ? もしかしてババさん、ダメでしたか『トム・ヤム・クン!』?

「うーん、だつて、話が面白くなさ過ぎるでせう!」

 まァ、確かに脚本と演出は雑でしたよね。一寸ビックリするくらゐ。ホントに同じ『マッハ!』のスタッフか? と、思ひましたけど。

「もう、ねー、前半とか、どんだけ退屈やねん! と思ひましたよ」

 私は結構、象とか観てゐるだけで楽しめましたけど。崖の上での親象との別れのシーンなんて、感動しましたけど。

「ま、象は良かつたですよね、象は。それに、後半になると俄然面白くなつたんだけど、エンドロールのところでガクッとズッコケさせられました。」

 ああ、あれ…最近の流行りですかね?

「どうなんでせう。近頃はチョクチョクありますけど。あれで、全てが台無しです!」

 ううーん、でもアクションは凄かつたと思ふんですが…。

「アクションは凄かつたですよ! いや、アクションは凄かつた! ブルース・リーっぽいところも良かつたですよね」

 でせう。確かに脚本と演出にはかなり難ありですが、私はアクションシーンがそれを補つてあまりある、と感じたんですけどねェ。あのアクションの前では、脚本も演出も問題ではない! と。

「いや、ボクはだからこそ勿体ない! もつと面白い映画にできたはずだ! といふ想ひの方が強いです。モッタイナイ!」

 なるほど。確かに映画的完成度では『マッハ!』にかなり劣りますからねェ。でも、満足度では同じくらゐだつたんですよ、私は。なんか雑なところも、それなりに味として、好意的に観てしまひました。

「いやー、ボクは今回は期待してしまつたかな。絶対に期待して映画を観てはならない、といふ自らに課した掟を破つてしまつたかもしれない」

 はは。私は多分、イーストウッドと北野武以外の映画には、ホントの意味では期待してゐませんから。なんていふか、本当に期待してゐる作品は、観るのが恐いんですよ。高すぎる期待を裏切られた時のことを考へると。…ああ! イーストウッドの硫黄島を撮つた新作! 楽しみすぎる! 恐い!!!

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