アワーミュージック(Notre Musique)
[映画]
弥生座にて『アワーミュージック(Notre Musique)』を観る。ゴダールの新作である。先日の日記で私は、前作は『フォーエバー・モーツアルト』だと書いたが、これは間違ひのやうで、その後に『愛の世紀』といふ作品があつて、これが前作にあたるやうだ。しかし、『愛の世紀』ッて、日本で公開したのかな? 私は全く知らなかつた。少なくとも京都ではやつてゐないんぢやないか? いや、分からないけれど。とにかく、最近はすつかりゴダールも下火で、新作がすぐに日本で公開される、といふ事もないので、今回の新作公開は非常に嬉しい。興奮してしまふ。イエー! てな感じで観てきました。
面白い。やつぱ、ゴダールは面白いわ。『フォーエバー・モーツアルト』の方が衝撃度では上だつたけど、今回も十分に面白い。面白さは同じくらゐか。といふか、ゴダールは常に前進してゐて、それが凄いと思ふ。今回も、『映画史』『フォーエバー・モーツアルト』から確実に一歩踏み出した作品となつてゐて、まづそこで感動してしまふ。全体として柔らかな雰囲気の中で、『映画史』『フォーエバー・モーツアルト』で行はれた試みが、洗練を経た形で再構築されてゐる。ゴダール自身も、ゴダールの役で出てゐるのだが、これまでの映画出演が常に「白痴」「道化」「痴呆老人」などの過剰性を纏つた役であつたのに、今回はごく普通のおだやかな人間として出てゐる。その事が映画に中心を与へず、サラエヴォを舞台に、様々なノイズに満ちた音楽を響かせてゐる。そもそもゴダールの映画は情報量が多く、一度や二度観ただけでは私の貧弱な頭ではその情報を処理しきれないのだけれど(それ故、何度観ても新たな発見があつたりするけれど)、今作もその事態は同様ながら、『アワーミュージック(Notre Musique)』といふ題名故か、それらノイズが心地よい音楽として楽しめた。これは、この感覚は何だらう?
また、ゴダールの映画は“アクション”に満ちてゐて、今作も、主人公のひとりであるオルガがサラエヴォの街を走り抜けるシーンの“アクション”に、ハッと打たれたりしたのだけれど、何と言つても庭園にてゴダールが突如頭をぶつけるシーン。あの“アクション”には飛び上がつてしまつた。な、なんだ今のは! ハッキリ言つて『ステルス』を何倍も超えるアクションシーンだと思つた。
最近は私も、近所のシネコンでハリウッド大作を観る、といふのが常態化してゐたので、「映画」を観る、といふ事を見失ひかけてゐた。その事に気がつかせてくれた、新鮮な映画体験。ババさんはこの映画を観て「心が洗はれる」と評したけれど、私は「勇気が湧いてくる」と言ひたい。ホント、生きていく勇気が湧きました。いや、マジで。
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「アワーミュージック」★★★
ジャン=リュック・ゴダール監督
2004年、フランスースイス
世界のどこかで
相変わらず
人は人と殺しあってい...2005年12月04日 13:09
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