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Text by 小川顕太郎
2005年10月21日(Fri)

実録・共産党
映画

 雑誌『en-taxi』11号別冊付録『実録・共産党』を読む。これは笠原和夫の未映画化作品であり、ファンの間ではその存在が有名な作品である。戦前の共産党の活動、といふか主に官憲との闘ひを描いたもので、予想してゐた通り無類に面白い。思想的な事はほとんど抜きで、武力闘争のみを描いてゐるので、それこそ東映ヤクザ映画! といふか、血湧き肉躍る感じで、是非とも映画化して欲しかつた作品である。

 ところでこの作品、何故映画化されなかつたかといふと、共産党傘下にあつた当時の東映京都撮影所の労働組合の圧力によつて潰されたといふ事らしいが、どうしてだらう? 別に共産党の事を悪く描いてゐる訳ではないし、どちらかといふと、かなり格好良く描かれてゐるので、別に反対する理由もないやうに思ふのだけれど。

「それはですね、主人公の渡辺政之輔、通称“ワタセイ”の最後の描き方にあつたやうですよ」とババさん。

「映画の中では、ワタセイは自殺なのか、官憲に殺されたのか、分からない描き方になつてゐるぢやないですか。どうも笠原和夫が色々調べた結果、笠原和夫自身は“ワタセイは自殺”といふ結論に達したさうなんです。が、共産党の党史には“官憲に虐殺された”となつてゐる訳で、それでああいふ妥協した描き方にしたやうなんですが、それでも共産党は許せなかつたんでせうね。」

 なるほど。それはさぞかし、笠原和夫は無念だつたでせうね。なんとか押し通す事はできなかつたんでせうか。

「いや、当時は共産党が日の出の勢ひで、共産党の映画を作れば動員が見込める! といつた動機から、最初は企画が立てられたさうですよ。だから、揉めるぐらゐなら止めてしまへばいい、といつた感じでせう」

 さすが、活動屋! ッて感じでイイですね。でも、…やはり映画化して欲しかつた。誰かやりませんかねェ。

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