作品を制作2
[書・篆刻]
やばい。展覧会は明日ぢやないか。といふか、搬入が明日の朝9時なので、あと5時間しかない(つまり、仕事から帰つてきて、現在午前4時)。が、実を言ふと、印は昨日に彫つたのだ。残りは文章を書くだけ。しかも文章の構想はすでに考へてある。と、いふ事は、楽勝だな。大丈夫、大丈夫、焦ることはない。とりあへず、軽い気持ちで筆をとる。………なんか、なァ。うーん、筆は放棄。万年筆に変へる。………これも、なんか、なァ。むむむむむ。ま、行き詰まつた時は気分転換だ。その方が、結局は能率があがるのだ。これ、基本。で、小説『ジョゼと虎と魚たち』田辺聖子著(角川文庫)を読む。
おもろい。この本は短編集であり、といふ事は『ジョゼ虎』も短編だつた訳で、映画版とは結構違ふ。映画は、この短編をもとに独自の世界を展開したものだつた訳だ。それであれだけ素晴らしかつたのだから、これは脚本が偉いな、うん。むろん、小説『ジョゼ虎』も良かつたですよ。で、他の作品もなかなか面白い。全ての話の主人公が女性であり、だいたい特殊技能を持つてゐるか仕事の才に恵まれるかして、優雅に独身生活をエンジョイしてゐる。恋もその楽しみの一部、といつた感じ。年上の妻子持ちの男と不倫したり、年下の男の子をもて遊んだり。ん、これ、なんか村上春樹の小説世界みたいだな。主人公が、都会生活を優雅につつましく生きる独身者、といふ点が。ちょいハイソな感じ。さすが田辺聖子、お嬢さん育ちを感じさせる。かういつた点は、村上春樹の場合、往々にして批判されたりするのだけれど、田辺聖子はどうなのかなァ? 結構プチブル的だと思ふけど。いや、面白いから好きだけどね、うん。……などと、関係ない事にうつつをぬかしてゐたら、もう8時だー!! ま、まずい。んんんんんん、あ、突然思ひついた。トモコのガラスペンを借りたらどうだらう。早速、やつてみる。まづ、静かに線を1本引く。と、驚くほど字が滲んだ。アチャー、こら、あかん。これでは字が読めない…。…いや、待てよ。これは、これは、これは、これは。……
8時半、私は作品を手に家を飛び出した。
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