自転車で走つてゐると
[etc]
POWERくん夫妻来店。「今日はねェ、凄く面白い話を持つて来たんですよ!」と、意気込んでいふ。その“凄く面白い話”とは、以下。
先日POWERくんが鴨川沿ひを源流に向かつて自転車で走つてゐた時のこと、「あ、来たな」と思つた瞬間に後輪がパンクをしたのださうだ。その日は雨が降つたり止んだりだつたのだが、雨の日にはパンクしやすい、との事だ。そこで早速チューブを交換してサイクリング続行。POWERくんによれば、サイクリストは大抵替へのチューブを持つてゐるといふ。で、目的地のお寺まで行き、帰りの山道を走つてゐると、「あ、来たな」と思つた瞬間に、またパンクをしたのださうだ。POWERくんによると、さすがにサイクリストでも、二つはチューブの替へを持つてゐないさうだ。そこで仕方なく、ガタガタガタガタと、下りの道をそのまま走つてゐたら、サッと何かの横を通り過ぎた。なんだ、今のは? ハッパにしては大きいし、…? と気になつたPOWERくんは、パンクしてゐるにもかかはらず取つてかへしてみた。すると、なにやら黒い塊が、道の真ん中にあつた。大きさは結構ある。が、生物なのか、無生物なのかも分からない。こんな誰もゐない、雨のそぼ降る夕暮れの森の中で、謎の物体Xと孤独に対峙! と、戦慄を覚えたPOWERくんだが、好奇心には勝てず、恐る恐る近づいてよく見ると、微かに波打つてゐる。呼吸をしてゐる! 生物だ! と興奮したPOWERくんの頭に天啓のやうにある考へが浮かんだ。こ、これはツチノコでは!!! とうとう自分はツチノコを発見してしまつた?! かも。とりあへず、写真、写真、と身体を探つてみたが、アチャー! 携帯電話忘れてきたー! …かくなる上は…ドリャー! と、持つてゐたペットボトルの水をかけてみた。すると、ノソノソと短い手足を動かしてわずかに前進したのだ! が、手足? 確かツチノコには手足がなかつたんぢやないかなァ? すると、これは何? これを使つて何か特許申請できる? もしかして、ボク、いま凄く危険な状況にゐる? と、せはしなく頭を回転させたPOWERくんは、自転車の先でその謎の生物をツンツン、と突いてから、猛然と家路を辿つた、との事だ。
「で、家で調べて分かつたんですけど、何だつたと思ひます? 多分、あれはボクが思ふに…オオサンショウウオですよ! 自転車に乗つてゐて、オオサンショウウオに会つちやつたー!」
なるほど。さういへば京都の北の方にはオオサンショウウオがゐるらしいね。友人もたまに見掛ける、と言つてゐたな。
「な、なんですか! その普通の反応は! この、ボクの興奮を分かつて下さい。自転車に乗つてゐる時にオオサンショウウオに会つたんですよ! で、ツンツン、ですよ。これ、これですよ! で、ケンタロウさんなら、もしオオサンショウウオに遭遇したらどうします?」
うーん、ま、とりあへず話しかけるな。
「!!! …あ、ああー! しまつたァー! 話しかけるの忘れてたー! …一生の不覚、ガクッ」
楽しさうだな、POWERくん。
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