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 Diary 1999・12月23日(THU.)

サクライさんと会う

「クレヨンハウス」でランチ image 渋谷のハチ公前で午前 11 時にショートカットのサクライさんと待ち合わす。久しぶりの再会だ。以前会った時よりはいくぶん落ち着いた印象を受ける。まずは「クレヨンハウス」という所のランチバイキングで腹ごしらえをしてから、ブラブラ歩きを開始する。

 私は特に東京に対してイメージがあるわけでもなく、従って特に行きたい所もないので、ほぼサクライさんに任せるような感じで歩き回る。どちらかと言えば、東京に来たというよりは、人に会いに来た、といった感じだったので、どこでもいいからサクライさんと色々喋りながらブラブラできればよかったのだ。とはいうものの、案内役のようなものを引き受けざるを得なかったサクライさんは大変だったろうと思う。お疲れさまでした。ホスト役というのは大変なのだ。客が一番だぜい。

 という事で、「インディヴィライフ」「アオヤマブックセンター」などを巡りながら様々に語り尽くした事を中心に記していこうと思う。

 私が一番印象に残ったのは、サクライさんの、境遇の変化に伴う嗜好/思考の変化だ。サクライさんは以前は形而上学的なものを好み、現実と接点のあるようなものは嫌いだったのだそうだ。現実という下世話な制約がない、あるいはほとんどない、「純粋培養」されたものの方が面白いと感じていたそうなのだが、最近では逆になんらかの形で現実と接点があるものの方に興味が移ってきたそうだ。ハードコアアートからデザインへ、分析哲学からコンピュータープログラミングへ。この変化が、フリーからコンピュータープログラマーというサラリーマンへ、という生活の変化と連動している所が面白いのだ。

 世間的にはこういうのを「大人になった」というのだろう。前述の「落ち着いた印象」というのも、サクライさんが大人になった故か、と思えば面白い。なんか偉そうなこと書いていますが、これは私の偏見丸だし日記なので許してやって下さい、サクライさん。「純粋」という名の幻想を捨て、現実という名の制約を制約ではなく「生の条件」と捉えるべきだ、という私の思想に則ってサクライさんを見てみたというわけです。はは、面白くないですか?

 それにしても、サクライさんという人は音楽にむちゃくちゃ詳しいのだが、それも「音楽」というのが現実となんの接点もない「純粋」なものだと思っていたからこそのめり込んだという事で、故に今は昔ほど興味がもてないとの事なんだけれど、ここら辺が面白いんだなあ。

 私にとって音楽とは、現実と接点がないどころか現実そのもの、生活そのものである。だから昔のサクライさんから見れば、「モッド」とかいいながらレコードと同じくらい服に労力をかける私のような人間は、音楽のことを本当に分かってない「不純」な奴・ファッションで音楽を聴いている奴と思えただろうが、逆に私からみれば、レコードばっかし買って、音楽が服装やライフスタイルに反映されない奴は、表面的・情報的なことばかり追いかけて本当に音楽を聴いたことが一度もない奴、となる訳だ。

 私の考えは今でも変わらない。音楽に限らず、哲学でもアートでも、生活と直結しなければ意味がないと考えている。だからあまりにも現実・生活から遊離した現代美術とかは認めない、というか興味がない。青山次郎風に言えば「美を所有するのではなく、美を生きるのだ」。まあ、そんなとこです。サクライさんにはもっと服をガンガン買ってほしい。できれば音楽と直結するような形で(これは別にミュージシャンのような格好をするという意味ではありませんよ)

 サクライさんに、デザインの新潮流であるイギリスの「inflate」などの家具・雑貨が売っている店「trico」に連れていって貰う。素晴らしく私好みの店だった。私にとって重要なのは私がそれを買えるか・使えるかということなので、色々と買い込む。

「ナディフ」「オンサンデーズ」などのアート系の本が充実している本屋をめぐる。「オンサンデーズ」はショートカット取り扱い店でもある。サクライさんから店長のクサノさんを紹介して貰い、そのクサノさんの薦めで、上のワタリウム美術館に「ゲームオーバー展」を観にいく。

 サクライさんは「これはつまらなそうだ」といって嫌がったのだが、私はせっかく東京まで来たのだし、ワタリウム美術館という所にも入ってみたかったので、無理矢理サクライさんを連れてはいる。で、結果は…サクライさんの予想通り、恐ろしくつまらない代物だった。

 特に小沢剛がやっている「相談喫茶」とかいう、お客さんにどんな店がいいかと相談し、その意見を取り入れて店を改装しまくるというのが酷い。学園祭のだしものじゃあないんだから。私が最もダメだとイメージする現代芸術の典型だ。サクライさんも大激怒。が、私は罵倒を繰り返すサクライさんを見て少し安心した。まあ、当たり前のことなんだけれども、やはりアートが好きな人のなかにも色々いて、分かっている人はこんなもの下らないと思っているということだ。

 対して、「オンサンデーズ」でサクライさんに薦められてみたローレンス・ウィナーの作品集は面白かった。なんというかショートカットっぽい。別にサクライさんがローレンス・ウィナーを真似したとかそういう事ではなく、同じような感性なり論理、興味の持ち方があって、それに私も惹かれてここまで来たのだなあ、と趣深く思ったわけです。

 この「ゲームオーバー展」、来年には「狂わせたいの」の上映があったり、バイターズのショウがあったりするようだ。ううん、チョウくん元気かな?

 下北沢の「ONSA」という喫茶店へ。レコードショップ併設のカフェで、そんなに広くなく、手作り感もあってなかなかイイ感じ。ここで「エッグタコライス」なるものを注文する。タコライスの卵とじだ。この後カノウと夕飯を一緒に食べる約束をしているのに、つい気になって注文してしまった。で、半分ほどサクライさんに助けて貰う。申し訳ないことです。さらにサクライさんにはショートカットの別冊や最新号までいただき、ほんとによくして貰いました。ありがとうございます。今度は是非、京都まで来て下さいね。

 カノウと渋谷のお好み焼き屋で食事。わりと大きな店なのだが、働いている人達がみな外国人で、注文などの意志疎通がうまくいかず、ビール代を多くとられてしまった。カノウによると東京は今こういった店がすごく増えているのだそうだ。今日の公演はどうだったのかと問えば、今日は宮台真司が観にきたそうだ。それも招待客ではなく、自費でだ。さらに公演からいたく刺激を受けたようで、カノウと 1 時間程話し込んでいったらしい。うううん、そうかあ。宮台が興味を持ったというのは面白い。どんな風に思ったのか知りたいものだ。どっかで書かないかな。

 その後は夜の東京の街をカノウとフラフラ。ダメ連の溜まり場である「あかね」を外から覗いたり、大川隆法のお気に入りだったという今川焼きを食べたりと、そんなんばっかり。疲れました。

小川顕太郎 Original:2000-Dec-24;