Diary 2005年5月15日(Sun.)
勝利のみ
ジェンガ対決。本日はテラリー VS ユキエさん。多分、今大会で最も恐れられてゐた試合のひとつだ。テラリーにとつてユキエさんは、オパールでの仕事上のパートナーであり先輩であり、といふか直属の上司であり、テラリーの生殺与奪権を握つてゐる存在だ。だから試合の結果如何によつては、これからのテラリーの仕事内容が大幅に変はる可能性がある。が、まだ若いテラリーにとつてそんな事は眼中にない。ただ、勝つことのみ! 宮本武蔵のやうに、それだけがテラリーの求めるものだ。この若さが吉と出るのか凶と出るのか。なんにせよ、闘ひは始まつた。
静かだ。静かである。こんな静かな闘ひは初めてである。ジェンガを引き抜き、置く、その音さへ聞こえない。それはあまりの緊張感で、空気が振動しないからだらう。テラリーもユキエさんも、無言・無表情。ただ、ジェンガの塔だけが高くなつていく。周りで観てゐる人々は、息苦しさに顔色を変へ始めた。胸を掻きむしる人、座り込む人、顔色を紫に変へて口から泡を吹く人…。これ以上の試合の続行は危険なんぢやないか? と私が思ひ始めた時、ガラガラガラー!! と、ジェンガの塔は崩れた。
「やつたー!!!」とガッツポーズをとるテラリー。テラリーが勝つてしまつたやうだ。
「くやしいー!!!」とユキエさんは叫んで、キッチンに戻り、包丁の刃を研ぎ始めた。
これで水曜からの(次回のテラリーの就業日は水曜日)テラリーの仕事内容は一変するだらう。そして、今こそ勝利の美酒に酔つてゐるテラリーだが、徐々に勝利の苦さ、「負けるが勝ち」といふ言葉の真の重み、などを知つていく事だらう。それが、成長、といふ事なのだ。
テラリー、頑張つて成長してください。
小川顕太郎 Original: 2005-May-18;