京都クルーズ
タカハシくんが東京に行つてしまふので、最後に一緒に京都を廻ることにした。13時半に待ち合はせ、精進料理を食べた事がないといふので、精進料理を食べに大徳寺の泉仙に連れて行き、ついでに大徳寺を見て廻る、といふのが昨日たてた計画である。が、起きたら時計の針は14時を示してゐた。………やはり、な。
約1時間半、タカハシくんを待たせた後、予定通り「泉仙」に行き、精進料理を食べる。
「なんで肉を使はないんですか? イスラム教で豚肉を食べないのと同じですか?」
「いや、一寸違ふ。仏教のは殺生戒だから、殺生を禁じてゐるんだ。結果として肉食を禁じてゐるの」
「でも、ボクの働いてゐた店にはよくお坊さんがやつて来て、肉を食べまくつてゐましたよ。お酒も飲んでゐたし、女の人を連れてゐました」
「うむ、今の日本の坊主は堕落してゐるからな、仕方ないんだよ。でも、別にいいんだ、みんな地獄に落ちるから。」
「泉仙」を出ると、もう大徳寺はみな閉まつてゐたので、建勳神社に行く。タカハシくんが初めて興味を持つた歴史上の人物が織田信長だつたので、ここには連れてこやうと考へてゐたのだ。むろん、ここの祭神は織田信長である。
「誰もゐませんね。織田信長ッて、人気あるのと違ふんですか?」
「まー、人気はあると思ふけど、それとこれは別だよ。神社巡りが趣味の若い奴なんてあまりゐないだらう。オパール周りには何故かたくさんゐるけど。」
そのまま船岡山の頂上に登る。平安京は船岡山を中心に作られたので、その事を説明し、京都の街並みを眺めながら「昔はここにドーンと朱雀大路が通つてゐて、あそこらへんに羅城門がガーンと建つてゐて、左右にドン! ドン! と東寺、西寺があつたんだよ。」などと、見てきたやうな事を言ふ。そして船岡山の巨石、この石故にここが聖地とされ、平安京が作られた、その石を示して、その石と一緒にタカハシくんの
写真を撮る。「えー、恥ずかしいですよ、いいッす。」
「なにを言つてゐるんだ! そら、石に抱きつけ!!」
その後、雨がそぼ降る中、堀川通りを歩いて下がる。途中で、小野篁 & 紫式部の墓や白峰神社、晴明神社、一条戻り橋などに寄り、その間ズウッと説明のしッぱなしだつたので、私はすつかり疲れてしまひ、夕飯の時には、ワインを飲んでその場で寝てしまつた。むむー、後はトモコに任せた! バタン、グー。
タカハシくん、東京に行つても頑張つてくれ。
小川顕太郎 Original: 2005-Mar-3;