ネリーが来日するのだが
トモコがインターネットをやつてゐる最中に頓狂な声をあげた。「ネリー来るぢやない! しかも、チケットの発売日は6月4日の朝10時! …て事は、あと2時間後!」我々は、ちやうど寝やうとしてゐた所であつた。しかし! これは必ずチケットをとらねばならない。といふ事は、徹夜か…。それにしても、ネリーほどの大物アーティストの来日公演の報が、なぜ我々のところにまで届かなかつたのか。調べてみると、すでに先行発売は終了してゐる。くそ! 「もしかして…」と、トモコがさらに調べると、出てくるわ、出てくるわ、ヤフーオークションにて、最前列のチケットがザクザクと出てきた。一体これはどういふ事だ! ダフ屋が横行してゐるのか? それとも素人がダフ屋まがひの事をしてゐるのか? それとも関係者が小遣ひ稼ぎのつもりでやつてゐるとか? なんにせよ、不愉快な話だ。ぬけぬけと、8000円のチケットに「希望落札価格2万*千円」とかつけてゐる輩までゐる。恥知らずな。とにかく、こんな連中には関はつてゐられない。懐具合から言つても、関はつてゐられない。我々は、10時からの一般発売のチケットをとる事にした。
私とトモコ、それぞれが電話を持つて、違ふ所にかける。チケットは3カ所で発売されてゐるのだ。9時59分40秒を過ぎたところから、ゴー! 幸いにも、2、3度かけ直したところで繋がつた! 同時に、トモコも繋がつたやうだ。さすが! 昔取つた杵柄、とでも言ふか、自分たちを褒めてやりたい気持ちで一杯になる。私とトモコはお互ひに笑みを交はした。が、一瞬後! トモコの顔が硬直する。え? と、思ふ間もなく、私はその意味を了解した。我々は東京公演専用ダイヤルに電話をしてゐたのだー!!! 泣きながら、パソコンをたちあげて番号を調べ直し、また電話をかけ直す。が、今度は全然繋がらない。ちつとも繋がらない。全く繋がらない。天に見放されたか。我々は、自分たちを罵倒したい気持ちで一杯になつた。詳細に言ふと、お互ひを罵倒し合ひたい気持ちで一杯になつた。電話は、まだ繋がらない。……
ま、結局とりましたよ、チケット。行きますよ、ネリーの初来日公演。そりャ楽しみですよ、たとへ席が悪くても。ST.LUNATICSも一緒に来るみたいだし。マーフィー・リーやアリも一緒に来るといふ事でせう? それは楽しみ。あ、なんか明るい気持ちになつてきました。
小川顕太郎 Original: 2005-Jun-6;