京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

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 Diary 2005年4月22日(Fri.)

懐かしい人

 鳥取のマキさん来店。むろん今は大阪でブライス・ドール・ツアー展の真ッ最中だが、ブライスを一人連れてチョイと京都まで遊びに来たのであつた。そこにワリイシさんも、自らのブライス、アニエスを連れて来店。さらにテラリーまでシャッポーとともに加はつたので、三つ巴、血みどろ、阿鼻叫喚の闘ひが展開。したやうで、私が店に行つた頃には、闃とした店内には荒涼たる風が吹き抜け、兵どもが夢のあとを偲ばせる草ひとつ生えてゐないカウンターの上には死屍累々、マキさんの連れてきたブライスひとりが大きな目を見開き、金髪を靡かせながら立つてゐた。シャッポーなど姿も見えない。やはりシャッポーは、といふかテラリーはマキさんの敵ではなかつたか、と私は深く瞑目したのであつた。かうなればテラリーがマキさんに勝つ方法はひとつ。それは、腹話術の習得だな。頑張つてくれ、テラリー。ターキー池田の腹話術講座でも受講して。

 閉店時間も過ぎ、カウンターにはババさんがゐるのみ、となつてゐた。今日も終はりですねー、と一息ついてゐると、エレベーターが上がつてきて、誰か来たやうである。こんな時間に誰かな? と思つてゐると、真ッ白なハンチング帽を被つてずんぐりした、シカゴあたりのミュージシャンのやうな黒人が入つてきた。コフィー! なんと、以前オパールの上の階でアシャンティといふアフリカ料理屋をやつてゐたコフィーであつた。

「オー! ナツカシイネー!」と言つてコフィーは店内を見回す。そしてババさんを見つけ、「オー! ババサン! ワタシ、オボエテイルネ、ババサンー!」と、ババさんと固い握手を交はす。ガーナ(コフィーの母国)では父のことを「ババ」といふらしく、覚えやすいのだらう。ちなみに、私の名前は最後まで呼ばなかつた事から、多分忘れてゐると思はれた。

 コフィーはオパール上階の店を畳んだのち、西京極の方で店をやつてゐるのだが、色々と話を聞いてゐると、最近はミュージシャンとしての自分に目覚めたやうである。なんでも自分の娘のためにピアノを買つてあつたさうなのだが、店があんまり暇なので、なにげなくピアノに触れてみたところ、スラスラと弾けてしまつたのだといふ。

「モー、ビックリシタネー! ホント、ビックリシタ」

 とコフィーは言ふが、それは私もビックリしました。やはり、音楽の才能があつたんでせうね。どんな曲を弾いてゐるのか分かりませんが、まさか「チョップスティック」ではないだらう。今では店でお客さんのリクエストに答へてピアノを弾き、歌つてゐるといふ。凄い。

「タブン、デビューデキルネ、タブン」

 といふ根拠は何なのかよく分かりませんが、頑張つてほしい。デビューうんぬんとは関係なしに、一度コフィーの弾き語りを聴いてみたいものです。西京極の店に、行つてみるか。

小川顕太郎 Original: 2005-Apr-26;