顔文字
ヤマネくん来店。ヤマネくんが知人の学校関係者から聞いた話によると、現在高校ではパソコン教育なるものが行はれてゐるやうなのだが、そこでメールの書き方などを教へてをり、なんと! なるべく顔文字を使ふやう指導してゐる、といふのだ。理由としては、微妙なニュアンスが伝はらない事によつて起こる誤解を避けるため、といふ事らしく、例へば笑顔のマークや(笑)などを入れて、悪意のない事を積極的に伝へなさい! といふ事らしい。なるほど。確かにそれは一理ある。よくメールのやりとりからもの凄い喧嘩に至つた、といふ話を聞く。私自身も経験がない訳ではない。これは、文章を「書く」能力、実はそれだけでなく「読む」能力においても、各人にもの凄く差がある、といふのが一因だと思ふのだが、それによつて思つてもゐなかつた誤解が生じてややこしい事になる。それを避けるために、とりあへず顔文字を使ふ、といふのはアリだらう。特に、携帯電話を使つたやりとりなどは、それほど長い文章を書く訳にはいかないので、仕方ないか、とも思ふ。が、顔文字の使用は、確実に文章能力を落とす。だから、それとは別個にキチンと文章を「書く」、あるひは「読む」、といふ訓練をしないと、どんどん頭が悪くなつていくばかりだと思はれる。頭のよしあしといふのは、文章能力に拠つてゐるからだ。
それに顔文字といふのも、もちろん常に有効といふ訳ではない。ヤマネくんによると、最近知り合つた若い子たちからのメールには、必ず顔文字が入つてゐるといふ。私なんかは、顔文字が入つたメールを貰ふと、なんだかバカにされたやうにも感じるし、そもそもそんなメールを書いた人間の事を低脳と感じてしまふ。大の大人が、赤ちやん言葉で喋つてゐるやうに思へるからだ。私のやうな人間も、数多くゐるだらう。ちなみに私は現在35歳である。
「でね、ボクも一寸、顔文字を使つてみたんですよ」
ほう。それで?
「とりあへず相棒のタケダに、顔文字入りのメールを送つてみました。真夜中に。すると、すかさず返信されてきまして、『顔文字はいらん!』とだけ書いてあつたんですよ! ハハ」
うーん、分かる分かる。
「でね、続けて今度は弟に同じやうに顔文字入りのメールを送つてみたんです。すると…これもすかさず、100個くらゐ顔文字が返つてきました! わーい!」
うーむ、なるほど。
ちなみにヤマネくんは30歳です。
小川顕太郎 Original: 2005-Apr-8;