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 Diary 2004・11月5日(Fri.)

探偵小説

 先日ワリイシさんが「平井蒼太の作品、読んだことあります? 乱歩の弟さんですけど」と尋ねるので、否、と答へると、いきなり『怪奇探偵小説集3』鮎川哲也編(ハルキ文庫)を貸してくれた。何故私に? といふ疑問は残つたのだが、さういへば少し前に江戸川乱歩の話をしたなァ、それでかな? と考へ、とにかく有り難く借りることにしたのであつた。

 確かに私は学生時代、探偵小説を乱読してゐた。乱歩や久作、虫太郎に十蘭といつた大家を始め、小酒井不木、橘外男、大坪砂男、香山滋など。アンソロジーも様々読んだ。このジャンルはマイナーポエットに、忘れがたい作品が多いからだ。…などと書いてみたが、実はほとんどの作品を忘れてしまつた。たとへば、このジャンルのマイナー作品の中では比較的有名な作品、大阪圭吉『とむらい機関車』なんかを、どのやうな作品であつたか必死に思ひ出さうとしても、サッパリダメである。確かこの作品は、様々なアンソロジーに採られてゐるので、何度か読んでゐるはずなのだが…。

 とりあへず借りた本を読んでみる。探偵小説の短編は、大坪砂男『天狗』や久生十蘭の諸短編のやうに驚くほど高度に洗練されたものもあるが、大抵は素朴なエロ・グロである。そこが、最大の魅力でもあるのだが、またそこが退屈なところでもある。久しぶりに読んだ探偵小説は、非常に懐かしい感じがした。平井蒼太の『嫋指』も良かつたが、やはり海野十三『生きてゐる腸』と香山滋『マグノリア』がイイ…ッて、でも読んだことあるかな、この2作品? この二人の作家は、作品集を読んだことがあるからなァ。うーん、ま、そんな事はどうでも良い。実は一番面白かつたのは、編者である鮎川哲也による解説なのであつた。

 この本に収められてゐる作家の中には、マイナー過ぎて経歴その他が全く分からない人が何人かゐる。その人たちや作品について、自身も探偵小説作家である鮎川哲也が推理をするのだけれど、その推理がなかなか面白いのだ。たとへば、この小説はホモを扱つてゐるから作者は女性ではない、とか、ヴァイオリンの名器を壊す話だから作者は音楽家ではない、など。また、乱歩の『双生児』の解説では、私も双生児の子供が欲しかつた、女房に排卵剤を飲ませて双子を生ませれば良かつた、残念、などと書いてゐ。解説自体が探偵小説じみてゐるのだ。面白い。

 …うーん、海野十三の『三人の双生児』ッて、どんな話だつたかなァ。

小川顕太郎 Original: 2004-Nov-7;
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