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 Diary 2004・5月20日(THU.)

ビッグフィッシュ

公式サイト: http://www.big-fish.jp/

 京極東宝にて、『ビッグフィッシュ』(ティム・バートン監督)を観る。いやー、泣いた、泣いた。もう、近来稀にみる大泣き。などと書いても、私が基本的にどんな映画でも泣いてゐるといふ事実をすでに知つてゐる人たちは、またか、それで? と大して何も感じないだらうけれど、この映画での泣きは、ホント尋常ではなかつたのだ。もう身を震はせ、嗚咽の声をあげて泣いてしまつた。もともと私はティム・バートンの作品には弱く、『シザーハンズ』なんかでも大泣きをしてしまつたクチなのだけれど、この映画は『シザーハンズ』のやうに「可哀想…」といふのではなく、基本的にハッピーな話で、ラストに起こる「奇蹟」があまりに感動的な故に、のたうちながら泣いてしまつたのである。

 それでもエンドクレジットが出る頃には冷静さを取り戻し、このままではヤバイ、パンフレットを買ひたいけれど、こんな泣き崩れた顔ではとても人前に出られない、と、エンドクレジットが長々と続くことを祈つたのだが、アッケナク終はつてしまつた。仕方がないのでトイレに行き、時間を潰しついでに鏡で顔を見てみると、こりゃまた酷い顔をしてゐる! 泣きすぎて瞼が倍くらゐに腫れあがつてゐるし、口元は緩み、頬はふやけ、服がひどく湿つてゐる。周りの人たちも、ビックリしたやうな顔をして、コソコソ逃げていく。どうしようかと思ひ、しばらくそこに立つてゐたのだが、最終回でもあつたことであるし、いつまでもそこにゐる訳にはいかない。そこで帽子を深くかぶり、目元が見えないやうにしてトイレを出て、パンフレット売り場まで行き、見本の品を手にとつてパラパラと捲つてゐたのだが、さうやつて時間を稼ぐにも限度がある。すでに他のお客さんはみな帰つてしまつたやうで、映画館の人たちも早く閉めてしまいたい様子が、帽子の庇ごしにヒシヒシと伝はつてくる。で、勇を鼓して「パンフレットを一部」と言おふとしたのだが、声が嗄れてゐて「パフッ…」と意味不明の発音をしてしまい、それでもお金を出したので意味は伝はつたらしく、無事パンフレットを買ふ事ができた。そのまま、みんなの顔を見ないやうに帽子の庇に手を遣りながら足早に映画館を立ち去らうとすると、ガンッ!! と凄い音がして世の中が暗転し、大きな魚がバシャリッと水面を跳ね、1 万本の水仙の花畑が眼前に広がつた。映画館の人が、すでに出口のガラス戸をほとんど閉めてゐたのだ。

 と、まァ、人は自分の体験を語る時には幾分誇張し、尾ヒレをつけて話すものだけれど、そのことが幸福に繋がつてゐる、といふ事を余すことなく描ききつた、ティム・バートンの傑作。みなさん、是非観に行つて下さい。

小川顕太郎 Original: 2004-May-22;