さまざまなとき
ババさん来店。昨日メトロで行はれた「緊急フォーラム:音楽を自由に選択出来る権利を!」に行つてきたさうだ。これは例の輸入盤 CD の規制に関する法案についてのフォーラムで、主に音楽評論家や民主党の議員などからの事態の説明・啓蒙、加へて質疑応答、といふ形のものだつたらしい。大勢の人々が集まり、メトロは満杯だつたといふから、やはりこの問題に興味を持つてゐる人たちは多いのだらうが、周知の通り、この法案は先頃議会を通り、成立してしまつてゐる。実施は来年からである。とは言へ、来年からいきなり輸入 CD が禁止されたり、値段が上がつたりする、といふ訳ではない。条文に非常に曖昧な部分があり、その解釈次第ではこのやうなこと(輸入 CD の禁止など)も出来る、といふ状態なので、さうさせないための次の運動を始めやう! といふのが当夜のフォーラムの結論であつたやうだ。具体的にどうするのか、といふのがイマイチ分からないのだけれど、まァ、みなで緊密に連絡しあふネットワークのやうなものを作つて、いざといふ時に大衆圧力をかける、といつた所だらうか。とにかく、事態はまだまだ静観を許しません。
「ところで」とババさん。「ハッシーは凄いですねー。なんか、一所懸命映画を観てゐた頃のことを思ひだして、微笑ましくなるわ。」
確かに。私にも一所懸命映画を観てゐた時代があつた。それは、ま、ありがちながら大学生の時なのだけれど、名画座や二番館で行はれる映画の情報を集めて、やれアンゲロプロス特集やマカヴィエフ特集、日活アクション特集やドキュメンタリー特集などに馳せ参じて、一日に三本も四本も映画を観てゐた。オールナイトにもよく行つた。今はとてもそんな元気も熱意もなく、もうすぐチャオ・シネマでカール・ドライヤー特集がやるのだけれど、チラシを見た時に「おお! 絶対に行く!」と叫んだのだが、まづ行かないだらうな。
しかし、かやうに一時期でも集中して少々無茶な量の映画を観ることは、肥やしとなる。飛躍がそこで起こり、確実に映画の見方が分かるやうになる。…はずであると、さう信じて、ハッシーには当分のあいだ邁進して貰ひたい。とはいへ、そんなこんなで忙しすぎて、ハッシーがあまりオパールに来なくなるのも寂しいものだが。
オットー・プレミンジャー監督の『ローラ殺人事件』、オーソン・ウエルズ監督の『上海から来た女』、D・W・グリフィス監督の『東への道』。この三本が、いま最も観たい映画です。
小川顕太郎 Original: 2004-Jun-18;