偉いハッシー
ハッシー来店。の前に電話が掛かつてきた。今から10分後に行くので、ハンバーグプレートの大盛りとグァバジュースを作つておいてくれないか、といふ内容。なんでも時間があまりないさうだ。もちろん、用意して我々は待つた。しばらくして、仕事帰りのハッシーが約束通り現れた。「どうも、無理言ふてすんません」。ハンバーグを頬張りながらハッシーがした説明によると、本日おせちケーキの予約をしようと思つてゐたのだが、予定が入つて時間がなくなつてしまひ、かと言つて電話で用件を済ますのも味気ない気がして、わずかな時間を縫つてやつて来たのださうだ。うーん、ハッシー偉い! やはり人間さうでなくッちや。だてに中学時代に暴走族に入つてみんなに迷惑を与へてきた訳ぢやないな。ちやんとそこで義理といふものを、筋を通すことの大切さを、学んできたんだなぁ、偉い!
「あ、いや、どうも」
ハッシーの気ッぷの良さにも、私は感心してゐるんだ。靴やベルトや服に何十万も注ぎ込むなんて、なかなか出来ることぢやないよ。
「あ、でも、これは一生モンですから」
そんなこと言つても次の一生モンが出てきたら簡単にポイする、といふ噂も聞いてゐるが、さういつた今現在、この一瞬にかける意気込み、といふのが眩しいねェ。ハッシーにとつては常に今が真剣勝負、一生モンを巡る闘ひなんだなァ。
「そ、そんな、なんか褒めすぎですよ」
うーん、そんな謙虚なところも好感が持てるなァ。中身もないくせに自己主張ばかり強い奴が多い昨今、ハッシーのやうに顔と服と声だけしか自己主張してゐないなんて奥床しいぢやないか。ハッシーがやることなんて、精々どんな話題にもクビを突つ込むぐらゐ。それだつて、誰かに一言いひ返されたら、あとは沈黙を守る謙虚さだもんなァ。
「ケ、ケンタロウさん、変ですよ。なんでそんなにボクを褒めるんですか?」
え? うーん、やはり、日記のネタのためかなァ。
「エエェェェ!!!」
ま、そんなもんだつて、人生。