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両親から電話がかかつてきて、今日は父親の誕生日であつたと思ひ出した。もちろん父親の誕生日は覚えてゐて、数日前に本日届くやうにプレゼントを送つてゐたので、それの御礼の電話であつた訳だが、今日は日曜日でありそれなりに店が忙しかつたので、すつかり頭の中からその事が消えてゐたのだ。ところで人の誕生日や年齢、電話番号など、数字に関する物覚えが極端に悪い私であるが、何故か父親の誕生日を覚えてゐるのは、12月12日といふ一寸特徴的な数字の並びであるからだ。加へて、12月12日は小津安二郎の誕生日でもある。それで覚えてゐる訳だが、小津は死んだ日も12月12日である。それも確か還暦で死んでゐるはずだ。なんだかよく分からないが、凄いといふ気がする。
隣のビルにはレコード屋のJET SETがあるのでたまに行くのだが、さらに上階に焼肉屋がある。これが問題で、JET SETは5階と6階なのでエレベーターに乗るのだが、このエレベーターが凄く焼肉くさい! ニンニクとビールの臭ひが充満してゐる。階下に降りる時に、焼肉帰りの人たちと一緒になつた時は地獄で、今日もさういふ目にあつたのだが、彼ら(大抵は大人数でオジサンと若い男)はみな一様に赤い顔をして、くさい息を吐き、ゲップをしながら「うー、食ひ過ぎた」「あー、もうアカン、おれ吐きさう」などと言つてゐるのだ。私は恐怖で身の竦む思ひであつた。
このビルには他にBELLYといふヒップホップショップもあつて、そこでミックスCDを購入。今やヒップホップ界で大流行のミックスCDだが、ほとんどがCD-Rで、つまりはブート。安価で最新ヒット曲やレアMIX、フリースタイルが乱れ飛ぶ。メインストリームの流れさへ変へてゐるといふアンダーグラウンドムーブメントで、確かに面白く、私もついつい買つてしまうのだ。ヒップホップ本来の精神にも近いと思ふ。しかし、きりがなく、泥沼にズブズブと沈んでいく感じ。どうなつていくのだらうか。
小川顕太郎 Original: 2004-Dec-14;