停電
ババさん来店。「マイケル・ムーアの『華氏 911』を観てきたんですよ。弥生座なんですけど、『スクール・オブ・ロック』に引き続き、またしても満席でした。そして、結論。弥生座はデブの映画で大繁盛する! ババーン!!!」
マツヤマさん来店。「『スパイダーマン 2』を観たんですけどね、いやー、ファンの人を横にしてこんなこと言ふのもなんですが、キルスティン・ダンストは酷かつた! でも、あれ、ワザとでせう。あの表情、怖すぎる。おかげで、今夜も眠れさうにない。」
「さうですよねー! ホラーですよね、ホラー。もう、サム・ライミの映画の中で一番怖い」とババさん。
二人とも、言ひ過ぎです。
……と、ここで反則ワザだが明日のことに突入する。つまり日にちは 8 月 25 日である。
ベッチ来店。京都大丸にて行はれてゐる「大(oh!)水木しげる展」に行つてきたさうで、大量にグッズを買ひ込んでゐる。「こんなつもりぢやあ…」とベッチは言ふが、ほぼ予定通りの行動だと私は思ふ。
タカハシくん来店。本日東京から帰つてきたのだ。東京土産をくれた後、「明日からの仕込みがあるので…」と、店に働きに行つた。
ハッシー & YO! ちゃん来店。「お久しぶりです。キシシシシ…」と、相変はらずだ。そこにマツモトさん & タケオカくん来店。さらにオイシンまでやつて来て、閉店間際にしてはかなり店が賑はつてゐる頃、突如としてそれはやつて来た。
ガシャン! といふ音がして、電気が消へた。店内は、非常灯のみ点灯してゐて、真ッ暗である。丁度お客さんの会計をしてゐる最中であつたので、私は慌てて非常階段でビルの 1 階にまで駆け下りた。当たり前だが、エレベーターも使へなくなつてゐたのだ。私がなぜ慌てて 1 階にまで降りて行つたのかといふと、窓から向かひのロイヤルホテルを見れば、部屋の電気がついてゐたので、これは我々のビルだけの停電ではないかと思つたからだ。我々のビルは、最近になつて警備システムを強化してをり、ビルを最後に出る人が警備ボタンを押すと、ビル全体の電灯が消へて警報システムが作動する仕組みになつてゐる。私は、誰かが間違つてこのボタンを押したのではないか? と考へたのである。
ところが、さうではなかつた。街中の電気が消へてをり、行き交ふ人々が「停電! 停電!」と叫び交はして、騒然とした雰囲気が流れてゐたのである。向かひのロイヤルホテルだけ電気がついてゐるのは、自家発電だらうか。私は 6 階まで、また階段で戻つた。お客さん達に、事情を説明する。嵐ならともかく、何ごとだらうねー、と皆で、一寸ウキウキしながら語り合ふ。こんなハプニングは、なんとなく興奮するものだ。
ハッシーも、「うわー、こんなん初めてですわー」と嬉しさうである。暗闇の中で、ロウソクをつけたりして、和やかに談笑。電気の復旧を待つ。ま、もうすぐ電気は戻るでせう…。
ところが、ことはさう簡単には運ばなかつたのである。続く。
小川顕太郎 Original: 2004-Aug-26;