THE FRESHEST KIDS
タカハシくん来店。先日、岡本太郎について色々と説明した時に、なぜだかタカハシくんは岡本太郎の「本職は何かときかれたら、私は『人間』と答へる」といふセリフをいたく気に入つて、カッコイイですねーと感心してゐる。いつかそのセリフを使つてみたい、とまで言ふ。ううむ、しかし、それは止めておいた方がいいんぢやないか?
「なぜですか?」
だつてねえ…さうだ、一度やつてみるか。では、タカハシくん、本職は何?
「えー、『人間』です!!」
…ね、なんか、質問の意味を分かつてゐないアホみたいでせう。
「…さうかも」
DVD で『THE FRESHEST KIDS』を観る。これは「ヒストリー・オブ・ザ・B ボーイ」と副題がついてゐるやうに、B ボーイの歴史を綴つたドキュメンタリーフィルムである。今やヒップホップは世界中を席巻してゐるやうだけれど、巨大化するにつれ様々な歪みが現れてきてゐる。その最たるものはラップの突出であらう。ヒップホップとは、本来グラフティ・DJ イング・B ボーイング(ブレイクダンス)・ラップの 4 大要素によつて成り立つ文化である。が、この中でも一番新参者であるラップが 90 年代の半ば頃から突出してきて巨大化し、今やヒップホップ=ラップといふ誤解まで生むやうになつてしまつた。実際ラップは巨大産業化し、ラッパーたちは大金を掴むやうになつたのにひきかへ、グラフティアーティストや DJ や B ボーイたちは、その大部分が貧乏なままだ。それゆゑ、ヒップホップ文化にある種の亀裂が入りかけてゐる。この亀裂を修復し、ヒップホップを本来の姿に取り戻さうといふ動きが、ここ数年みえるのだけれど、先頃日本でも公開された映画『スクラッチ』(DJ たちの歴史を綴つたドキュメンタリー)とか、この 『THE FRESHEST KIDS』とかはその現れだらう。ヒップホップの創世記を辿り、先人たちへのリスペクトを胸に銘記するのだ。
初期の B ボーイたちの映像は素晴らしく、すでに神話的な色彩を帯びてゐる。たぶん、ヒップホップこそが真のカウンターカルチャーであつたと、後年評価を下されることであらう。我々は神話時代を無意識に生きてゐるのだ。そのことを自覚するためにも、この作品は必見かと。
私も再びやらうかな、B ボーイング。
小川顕太郎 Original:2003-Sep-12;