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 Diary 2003・11月26日(WED.)

三波春夫

 映画『キル・ビル』の影響か、最近は店の片付けの時に、演歌を聴いてゐる。哀愁味を帯びたマイナー調の旋律が、一日の仕事で疲れた心身に沁みる…。といふやうな日々を何日か過ごしてゐると、妙に陽気なものが聴きたくなつてきた。そこで三波春夫をかける事にした。三波春夫はとにかく陽性だ。メッチャ明るい。そんな三波春夫のアルバムの中で、浪曲でもなく、演歌でもなく、ポップスを歌つたものをかけてみる。『三波春夫ワールド全曲集 歌芸の軌跡ーザッツ・エンターテインメント』。これは素晴らしいアルバムだ。明るすぎて、気が狂いさうになる。

 冒頭の『ルパン音頭』がいきなり傑作である。特に 4 番の歌詞「ディスコディスコで、浮かれアメリカの ドギモをぬくのはいかが。ゴールデンブリッジを盗みとれ 自由の女神を盗みとれ」云々、といふ歌詞が恐ろしくアクチュアルで、私は一時期、アンチグローバリズム運動のテーマソングは『ルパン音頭』しかない、と考へてゐたほどである。が、実は個人的には続く『銭形マーチ』の方がお気に入りなのであつた。男の、正義の、背負はざるを得ない悲哀を、ここまで軽〜〜〜く、歌はれると、もう、最高!! だ。このアルバムの白眉だらう。

 …しかし、さらに素晴らしい曲があるのだ。それは、『しんちゃん音頭』『しんちゃんマーチ』だ! 『しんちゃん音頭』は、ラテンと音頭が合体したトラックの上で、三波春夫とクレヨンしんちやんが掛け合ひをする、といふもの。その高揚感は尋常ぢやない。ヤワな奴はブッ飛ばされるだらう。『しんちゃんマーチ』も素晴らしく、「ほめて ほめて ほめちぎつて 光る才能は 星の数〜」と歌つた後に、「それが日本の宝です!!」と叫ばれれば、グッと胸が熱くなる。三波春夫の全てを肯定する力は凄まじく、非常に神道的なものを感じる。三波春夫こそ、日本の魂(こころ)なのかもしれない、と強く思ふ。私は三波春夫の「お客さまは神さまです」といふ言葉を、自分の人生の指針としてゐる。

 ちなみにトモコは、このアルバム収録曲では『佐渡おけさ A Cappella Mix』がお気に入りで、勝手に「ブルガリアン・ヴォイス ミックス」と呼び変へてゐる。まァ、そんな感ぢなんですよ。

 三波春夫こそ、日本の宝であつた。

小川顕太郎 Original:2003-Nov-28;