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 Diary 2003・11月18日(TUE.)

マスメディアにご注意

 ババさん来店。先日ババさんがレビューで少し触れてゐたルワンダの大虐殺について、色々と喋る。私はこのルワンダの大虐殺についてのレポート、『ジェノサイドの丘』フィリップ・ゴーレイヴィッチ著(WAVE 出版)、を読んでゐないので、ババさんに事件の大略をまづ教へて貰つた。それによると、この事件が起こつたのは 1994 年。ルワンダにはフツ族とツチ族といふ 2 大部族があり、この二つがどうにも折り合ひが悪く、長年揉め続けてきたやうなのだが、それまではツチ族の方が政権を握り優勢であつたのを、半ばクーデターのやうな形でフツ族が政権を握つたところから、この悲惨な事件は始まつたのださうだ。政権奪取後、フツ族はメディアなどを通じてツチ族に対する攻撃を強めていつたらしいのだが、ある日、突然、フツ族の普通の人々が自分の隣人のツチ族の人々を殺戮し始めた。釘を打ち付けた棒や刀を持ち出し、自分の友人、隣人、親戚、生徒、仕事仲間のツチ族の人々を殺戮し始めたのだ。そもそも、このフツ族とツチ族といふのも、仲が悪いとはいへ、長い間ずつと暮らしてきた訳で、さうでない部分も大きく、お互いの部族間での婚姻もかなり進んでをり、はつきりと「ツチ族」「フツ族」と分けられない人々も多いやうなのだ。だからどんな言ひがかりで「ツチ族」と自分が分類されて殺されるか分からず、それを避けるため自らを「フツ族」と「証明」せねばならず、そのため積極的に隣人の虐殺を進める人たちも続出して、とんでもない大殺戮劇が展開したのだといふ。100 万人の人々が殺されたといふのだから、凄まじい話である。

 なぜこのやうなトンデモナイ事態が起こつたのか、といふのがババさんとの話の焦点だつたのだが、結論として、やはりマスメディアの発達が深く関与してゐるのだらう、といふ事になつた。フツ族の政権を握つた人々は、あらゆるメディア、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、などを使つて「ツチ族は悪い民族だ。根絶やしにせねばならない」といふプロパガンダを流してゐたさうなのだが、最初は悪い冗談としてしかとつてゐなかつた人々も、毎日それらの情報に接してゐるうちにしだいに洗脳され、そんな気になつていき、それがある臨界点に達した時に、大惨劇が起こつたのではないか。マスメディアといふのは、思考力を奪つてしまう力がある。本来、「知」といふのは人間(じんかん)=人と人との間に生じるものだが、その本当の「知」を奪ひ、イデオロギーといふ「贋の知」を注入する。テレビが最も酷いと思ふが、ラジオ、新聞、雑誌でも同じだ。それは、判断力を奪つてしまう。さうならないために、常にマスメディアから流れてくる「情報」には批判的に接しなければならない。ファシズムを生んだのも、スターリニズムを生んだのも、メディアの力だといふことを忘れてはならないだらう。

 と、まあ、このやうな話をダラダラとしてゐたのでしたー。

小川顕太郎 Original:2003-Nov-20;