Diary 2003・11月13日(FRI.)
一日中寝てゐました
クエンティン・タランティーノが日本に来た時、綺麗な女の人を見ると必ず「梶芽衣子みたいだ!」と騒いでゐたらしい。ちつとも梶芽衣子に似てゐない人に対してもさうだつたさうで、これはタランティーノの中では綺麗な人=梶芽衣子となつてゐて、「綺麗な女性だ!」といふ意味で「梶芽衣子みたいだ!」と叫んでゐたのだらうが、似たやうな事は、私の周りでもある。それはトモコが様々なモノに対して「ポーみたい!」と言ふことだ。私の目にはとてもポーに見えないモノに対してもさうなのだから、これはタランティーノと同じだらう。今日もトモコは恵文社に宇野亜喜良展を見に行つたのだが、そこで買つて来た本、それは恵文社発行でデザインは横須賀くんといふなかなか素敵な本なのだけれど、そこに描かれてゐる宇野亜喜良画の少女を指して「ポーみたい」と言ふのだ。私には全くさうは見えないのだが、トモコに言はせるとそれは、私の本質を見る心の目が曇つてゐるから、といふことになる。いや、そんな事はない、トモコの言ふことは悪しきイデア論だ、私はイデアは認めないんだ、と反論すれば、「ニーチェかぶれはイヤーねェ」と応ずるので、私はムッとして、ニーチェぢやない、仏教、中観派仏教だ、と言ひ返したものの、虚しくなつて口をつぐんだ。こんなものは全て言語遊戯に過ぎない、と思つたからだ。そこで私は草を結んで庵とし、そこでトモコとともに酒を飲んだ。シャンパンに白ワインに赤ワインにロゼにグラッパ。お代はカードで。すつかり酔つぱらつたので草を解き、そこを立ち去つた。
今日は一日中寝てゐました。
小川顕太郎 Original:2003-Nov-15;