怨み節
タケダくん来店。「第 2 回小林秀雄賞は、吉本隆明と岩井克人が受賞したんですが、どちらの受賞作も『語り起こし』スタイルだつたさうですよ。著者が語つたことを誰かが書き留め、それに著者が手を入れて完成させる、といふことです。どうもかういふ手法が流行つてゐるみたいです。で、『店主の日記』もさういふ風にしたらどうですか、と」
なるほど。でも、誰が書き留めてくれるのだらうか。タケダくん、やつてくれる?
ワリイシさん来店。映画『キル・ビル』の帰り。「さういへば昔、アヤちやんが祇園で働いてゐた時、お客さんがお店に梶芽衣子を連れてきてくれはつてんて。で、ダメモトで、『怨み節』を歌つて下さい! ッてお願ひしたら、『いいですよ』ッて、機嫌ようカラオケで歌つてくれてんて。アヤちやん、私の一生の宝やわ! ッて、喜んでゐたわ」
そ、それは羨ましすぎる。オパールに来店した有名人といへば……。
ヤマネくん来店。「『キル・ビル』はねェ、ボクは悔しかつたです! あれは日本人が撮らなアカンでせう! 全く、アメリカのオタクにやられるなんて…『マトリックス・レボリューション』も『風の谷のナウシカ』だつたし…。さうさう、『ラスト・サムライ』とかね、もうハリウッドは日本ブーム、これで日本人を喜ばせといて、またまたたつぷり日本からお金を搾り取る魂胆ですよ! アメリカ許せーん!!」
まあまあまあ。うーん、さうだ! 『バッドボーイズ 2』面白さうぢやない? ウィル・スミス好きのヤマネくんとしては、どうなの?
「何を言つてゐるんですか! あれはマイケル・ベイ & ジェリー・ブラッカイマーの『パールハーバー』コンビの作品ですよ! 許せーん!!」
さ、さうですか。えー、そのー、ヤマネくんが最近面白かつた作品は、何かないの?
「んー、やはり『ジョニー・イングリッシュ』ですね!」
ああ、あのローワン・アトキンソンが主演の…
「さういへば、ヤマネくんッて、ローワン・アトキンソンに似てるわねー」と、突然トモコが介入。
「え? さうですか。そんなこと、初めて言はれましたけど」
「いやー、似てる似てる。前からさう思つてゐたのよ」
「…あまり、嬉しくないんですけど」
「あ、さう。でも似てるわー」
「……」
私は密かに『ラスト・サムライ』が楽しみです。
小川顕太郎 Original:2003-Nov-14;