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 Diary 2003・11月1日(SAT.)

小谷野敦

 ………書くことがないなァ。仕方ないから、最近ちよつと気になつてゐる人のことを書く。それは小谷野敦である。私が最初に「小谷野敦」の名を目にしたのは、彼の「もてない男」といふ著書が話題になつた時だ。しかし、その時に私の周りでこの本を話題にしてゐた奴とその騒ぎ方になんとなく胡散臭いものを感ぢて、読みもしないうちに偏見が生じてしまい、「小谷野敦」の名は私の頭の中で片隅に追ひやられてしまつた。

 が、最近雑誌「新潮45」で小谷野敦の連載が始まり、それを読むとこれがなかなかいい。さう思つて、他の雑誌などを立ち読みする時に気をつけて小谷野敦のものは読むやうにすると、ますますいい。とにかくそのポレミカルな態度がいい。それも全く正統的なもので、よくあるイチャモンつけや、僻みや妬みからくるあてつけ、売名行為などといふものとは違つて、ただ真つ向から色んな人に斬りかかつてゐる。素晴らしい。少し前に、「正論」誌上での佐藤亜紀の連載が終はつてしまい、面白い連載がなくなつたなァ、と嘆息してゐた時なので、これはいい人を見つけたと、密かに喜んでゐるのだ。まだ著書は一冊も読んでゐないが、ま、それはぼちぼち読んでいけばいいか。

 この小谷野敦は、実生活でもなかなかポレミカルなやうで、もちろん「禁煙ファシズム」には闘ひを挑んでゐるのだが、路上喫煙禁止条例を作つた千代田区に行つては煙草を吸ひまくり、「健康増進法」を受けて禁煙にした駅に行つては、煙草を吸ひまくつてゐるらしい。もしそれによつて捕まつたり、罰金を科されるやうな事があれば、裁判に訴へてやらう(それによつてこれらの条例や法律が憲法違反である事を明らかにしてやらう)と手ぐすねひいて煙草を吸つてゐる、といふのだから最高だ。私はかういふ人が大好きなんですねェ、なぜか。

 と、いふ訳で、ただいま私の中で密かな「小谷野敦ブーム」が起きてゐる、といふどうでもいい話でした。ではまたー。

小川顕太郎 Original:2003-Nov-2;