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 Diary 2003・3月10日(SUN.)

遠回し

 カズ 16 来店。しばらくレコード掘りの話やクラブの話をしてゐたが、そのうち身体をユラユラと揺らし始め、次のやうな話をし始めた。

「クラブに踊りに行つても、ピークタイムは辛いですね。ベタな曲しかかからないし、フロアは混んでゐて踊りにくいし。終はりが近づくと、渋めの格好いい曲がかかるし、さういふ曲ではみんな踊らないからフロアは空くし、いいです。だから、ボクはいつも最後の方に、ひとりで踊つてゐますよ。だからなのかなア、ボクはよく顔を覚えられてゐるんですよ。よく、知らない人から声をかけられるんです。『このあいだ、***で踊つてゐたでしよ』とか言つて」

 私はカズ 16 のユラユラと揺れ動く身体の動きから何かを読みとらうとした。これは身体言語であらう。何か、喋つてゐるのとは違ふことが言いたいはずなのだ。何が言ひたいのだらうか。まさか、自分は目立つてゐる、などといふことが言ひたい訳ではあるまい。カズ 16 の話は続く。

「でもねエ、誰もゐないフロアで踊つてゐると、いくらしんどくても止めて帰ることが出来ないんですよ。なんか DJ の人に悪くて。それが辛いですねエ。」ユラユラ。

 なるほど。カズ 16 以外にオパールに客がゐないので、帰りたくても帰れない、と言ふことが言ひたかつたんだな。確かに、それはさうかもしれない。いや、変に気を遣つて貰はなくてもいいですよ。さういふこともあるさ。

 カズ 16 は帰つていつた。そして誰もゐなくなつた。いや、我々スタッフはゐるんですけど。

 本日は暇でした。

小川顕太郎 Original:2003-Mar-12;