レニ・
リーフェンシュタール
私は無限成長哲学を信奉する者である。人間は若い時が最高で、あとは緩やかに衰退していくだけ、といふ考へをとらない。人間は、きちんと努力さへすれば、死ぬまで(死んで以降も?)無限に成長し続けられると考へる。また、さうでなければならないと考へる。人生は 70 歳からである、と真剣に考へてゐる。北斎は 70 歳を過ぎてやつとまともな絵を描けるやうになつたと語つたし、書の世界でも、歴史に残るやうな名品は、70 歳過ぎて書かれることが多い。だから、長い視点を持つて、常に弛まぬ努力をし続けることが肝要であらうと愚考してゐる。
このやうに考へる私にとつて、レニ・リーフェンシュタールは常に尊敬の対象である。レニ・リーフェンシュタールは、一般的にはナチのプロパガンダ映画とされる『民族の祭典』『美の祭典』を撮つた人として知られてゐるだらう。戦後はアフリカのヌバ族の写真集を発表するなど、写真家としても活躍してゐる。彼女の凄いところは、正に無限成長哲学を地でいつてゐることだ。断片的に時々入つてくる情報では、70 歳にならうが、80 歳にならうが、常に精力的に活動してゐるやうで、密かに注目してゐた。それは、66 歳の時に 40 歳年下の恋人を得たことからも明らかだらう。
その彼女の 48 年振りの新作映画が届いたといふ。現在彼女は 101 歳である。凄い。いや、ほんとに凄いのは、その映画の内容である。常に美を求めて飽くことなき彼女は、深海の世界に魅せられ、71 歳の時に 51 歳と偽つてダイバーズライセンスを取得する。その後、30 年間に 2000 回以上も海に潜つて映像を撮り続け、その映像を纏めたのが今回の映画『ワンダー・アンダー・ウォーター 原色の海』なのだ! …凄い。これだけ規模が広壮で、時間も手間もかかつてゐる映画など、さうさうあるものではない。是非とも観たいものである。京都には来るんでせうか。
私はこの情報を雑誌「芸術新潮」9 月号から得たのだが、その記事によると、レイ・ミュラー監督『アフリカへの想い』といふ、レニ・リーフェンシュタールを撮つた映画も同時公開されてゐるやうだ。こちらも是非観たいです。
私は現在 33 歳。まーだまだです。
小川顕太郎 Original:2003-Aug-28;