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 Diary 2003・8月6日(WED.)

ため

 オイシン来店。「工場、凄くつらいんですよー…もう、辞めたい」と言ふ。とうとう来たか。この 4 月から工場で働きはじめたオイシンは、最初の 3 ヶ月は研修期間といふこともあつて、「楽しい、面白い」と言つてゐたが、研修が終はればさういふことも言つてゐられなくなるぞ、と私が危惧した通り、本格的に働きはじめて一月ほどで、悲鳴をあげてきた。ところで、オイシンは仕事のどんな所に一番参つてゐるのだらうか。

「人間関係ですよ、人間関係! 実は、今の職場…みんなタメ口なんですよ! 高校を卒業してすぐ入つてきたやうな 19 歳ぐらゐの子が多いんですけど、もう、全員に対してタメ口。ボクに対してはもちろん、ボクより上の人たちに対してもさうなんですよ。もう、どうしやうかなあー、と思つて。ボクは一応、その子たちを「くん」づけで呼んで、タメ口をきかないやうにしてゐるんですけど、さうすると場が白けるんですよ。…先日も事務の女の子と喋つてゐたんですけど、『うちの職場はみんな気さくだし、人間関係で悩まなくていいから楽でせう』と言はれて、暗澹たる気持ちになりましたよ。これから、どうしていくか…」

 なるほど。それは辛さうだ。このやうな場合、どのやうに対応するか、何通りか考へられる。一番いいのは、オイシンが威厳を持つてみなと接し、徳の力をもつて悪風を正すことだが、まあ、これは絶対に不可能だらう。次に考へられるのは、「郷にいれば郷に従へ」の考へに従つて、オイシンもタメ口でみなと接することだが、容易に俗悪に堕ちてしまう危険性がある。ではこの間の道をいくか。しかし、間の道とは? 正直言つて、私はこの「タメ口をきく人々」を知らないので、具体的なアドバイスができない。「タメ口をきく人々」も千差万別だらう。根がいい奴もゐれば、悪い奴もゐるだらう。ただ、礼儀を知らないのだ。とはいへ、礼儀を知らないのは、やはり人間として問題である。だからその一点は守りつつ、なんとか皆とつき合つていく方法はあるやうな気がするのだけれど、それはやはり具体的な人間関係の中から見いだしていくものであつて…。

 本日も私は体調が最悪。フラフラになりながら、店にたつてゐた。故に、オイシンにあまり有効なアドバイスは出来なかつたが、まあ、いいだらう。辞めたい、と思つた時から闘ひは始まる、と、いふことで。

小川顕太郎 Original:2003-Aug-8;