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 Diary 2002・9月19日(THU.)

ヤマネ、ヤマネ

 雑誌「広告批評」の海洋堂特集には、これまで海洋堂が作ってきた様々なおまけ人形が載っているのだが、その中に『不思議の国のアリス』シリーズというのがあった。そのシリーズ中に「三月兎とヤマネ」というのがあり、これを目敏く見付けたヤマネくんが、「あれ? 『不思議の国のアリス』にヤマネなんか出てきましたっけ? もしかしてヤマネって世界的? ヤマネはみんなの人気者? ああ、気になる!!」と叫んでいたのを思い出し、家で「不思議の国のアリス」を繙いてみた。

 すると、ありました! 確かに出ています、ヤマネ。「気違いお茶会」の章で、帽子屋と三月兎と一緒にテーブルについている。お茶会の間中、ほとんど寝続けているので、まず間違いなくこれはあのヤマネです。私の持っている『不思議の国のアリス』はマーチン・ガードナーが注を付けたやつ(日本での出版は東京図書)なのですが、そのマーチン・ガードナーの注によると、「英国のやまねは樹上に住む齧歯動物で、ねずみによりも小さなりすによく似ている。この名前はラテン語のドルミール(眠る)から来ており、冬眠性がある。(中略)1906 年に出されたウイリアム・マイケル・ロセッティの思い出のなかに、やまねはダンテ・ゲイブリエル・ロセッティのペットで、テーブルの上で居眠りをする癖のあった袋ねずみをモデルにしたらしいと聞いているとある。(後略)」とのことです。

 気になってきたので、さらに調べてみる。今度は世界大博物図鑑(荒俣宏著・平凡社)。それによると、ロセッティがペットにしていたのはオポッサムで、ロセッティ家によく遊びに行っていたキャロルはよくテーブル上で居眠りをしているオポッサムを見ていて、これを寝てばかり居る怠け者というイメージのあるヤマネに置き換えた、とある。つまり、袋ねずみ=オポッサムか。

 またヤマネが冬眠することは古代から広く知られていて、アリストテレスの『動物誌』にもそういう観察報告が出てくるそうだ。さらに、古代ローマ人は特別の飼育場でオオヤマネを育て、冬眠前の肥えた奴を珍味として楽しんだという。うーん、面白い。

 ちなみに英名はドーマウス(dormouse)。ラテン語の「眠る dormio」と英語の「ハツカネズミ mouse」の合成語らしいです。

 本日はヤマネのお話でした。

小川顕太郎 Original:2002-Sep-21;