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 Diary 2002・11月19日(TUE.)

3D』TLC

 TLC の新作、にして 3 人での最終作、通算 4 作目の『3D』を購入。さっそく聴く。私はそこまで TLC のファンだった事はない。とはいえ、TLC は現代における最も重要なブラックミュージックのガールグループなので、デビュー作から全て購入して聴いている。今まで発表された 3 枚は、どれも時代を画する傑作と称され、私もその意見に異論はないものの、そこまでファンじゃないもんで、軽く受け流してきた。しかしながらこの新作は、グループの要ともいえるリサ・レフトアイ・ロペスが不慮の事故によって急逝したため、残った二人のメンバー、T ・ボズとチリが、すでに録音してあったレフトアイのパートを使いつつ作り上げたもので、いわば 3 人での最終作かつレフトアイ追悼盤とでも言うべきもの。だから、私もいささか襟を正して謹聴に及んだのであった。

 TLC はさすがにビッグネームなので、日本でもよく知られていると思うが、ただのアイドルグループだと思っている人も、けっこう居ると思われる(私の周りだけ?)。そこで、なぜ TLC が、現代で最も重要なガールグループと言われるのかを、私なりに説明したいと思う。

 まず 92 年のデビュー作『Ooooooohhh... On The TLC Tip』。当時のガールグループは、アン・ヴォーグの圧倒的な影響下にあり、セクシーな大人のディーバ路線のものがほとんどであった所に、TLC はやんちゃな女の子路線で敢然と切り込んできた。ファッションはストリート系で、コンドームなんかをアクセサリーに使い、歌詞も、セックスの事をあからさまに、女性主導の観点から歌ったものだった。男性のマッチョ主義を痛撃するレフトアイのラップは、かなりかっこいい。いわば TLC は、女性ブラックミュージックシーンに、ストリート感覚を持ち込んだのだ。以後、TLC 路線のガールグループが続々デビューする。

 次に 94 年のセカンド『CrazySexyCool』。これは MTV のミュージック・ビデオ・アウォードを獲得した『WATERFALLS』を筆頭に、何曲も(4 曲だったかな?)全米ベスト 10 に送り込んだ大ヒットアルバム。このアルバムによって、TLC はナンバー 1 ガールグループの地位を不動のものとする。日本にいたら分かりにくいが、黒人のアーティストが全米規模で、つまり人種を問わず売れる、というのは、やはり大変なことらしい。だから TLC が、完全な R & B を引っさげて全米アイドルになったというのは、画期的なことなのだ。以後、R & B が、アメリカの音楽シーンで一定の地位を得るようになる。(実はここらへんは、音楽誌の受け売り。だって、アメリカの音楽シーンの流れなんて、把握できないもの。でも、このアルバムは日本でも売れて、TLC の名前を知らしめましたよね)

 99 年のサード『Fanmail』。このアルバムは凄かった。私はこのアルバムで、初めて心から、TLC っていいなあー、と思った。曲がアバンギャルドなのだ。それでいてポップ。実際に大ヒットする。私はこういうのが好きだし、凄い、理想的、と思うのだ。革新的でありながら大衆的。シーンに対する影響力は絶大だったでしょう。で、ここまで盛り上げておいて、レフトアイのソロ活動による解散説というものを挟みつつ、それを吹き飛ばすレフトアイの悲報。アリーヤの事故死に続くものだったので、私は茫然としたのを憶えています。何かの陰謀かと。

 そして、上記のような形で作られた『3D』。思わず続けて 2 回聴いてしまいましたが、かっこいい! 基本的には前作の延長線上にありますが、よりポップになっている。2 曲目『QUICKIE』の、早漏男を痛撃する(?)レフトアイのラップがまたかっこよくて、もうこのレフトアイは居ないのか…と思うと、複雑な気持ちになります。

 なんにせよ、これを機会に TLC の魅力を再確認して貰いたい。私も、このたびファーストから全アルバムを聴き直して、TLC の魅力を再確認いたしました。これをもって、レフトアイへの追悼としたいと思います。

小川顕太郎 Original:2002-Nov-21;