やはりアメリカの
手先か?
雑誌「諸君!」の 11 月号を読む。凄い! もうイケイケですね。表紙からして「今こそ『日の丸』を立てる秋!」石原慎太郎・佐々淳行、「非道テロに『自衛隊派遣』どこが悪い!!」中曽根康弘・宮沢喜一、と大書してある。この雑誌は、一般には愛国保守派論壇誌という事になっているが、副島隆彦に言わすと「アメリカの手先雑誌」という事になる。私は、ふーんそうなのかな、そうかもしれないな、でもよく分からないし、面白いから読んでます、といった態度だったのだが、今回の米中枢同時多発テロ事件特集を読んで、思わず膝を打った。やはりアメリカの手先だったのか!?
彼らの主張はこうだ。まず、この事件では日本人も死んでいる。だからこれは他人事ではなく、日本の問題だ! 自由世界に対する挑戦なんだ! という。しかし、これはむちゃくちゃ強引なこじつけでしょう。冷静に考えれば、あのテロはどうみたってアメリカを狙ったもので、日本を狙った訳じゃない。ニューヨークには各国の人々がいるので、巻き添えをくっただけだ。もちろん、それはひどい事だけど、それと「日本に・自由世界に対する宣戦布告だ!」と解釈するのは別問題。アメリカに協力するために、強引なこじつけをやっているとしか思えない。
また今回の事件は非道なテロリズム集団による犯罪なのであって、話し合いの余地はない! 武力をもって闘うしかないんだ! ともいう。この解釈にもかなり問題ありだ。そもそもイスラムの過激派を、単純に宗教的な狂信者集団で、自分たちの理想達成のためには手段を選ばない気狂い集団、と規定する事に、そうとうの問題がある。だいたい、世界中をとびまわって洗礼・洗脳し、だめなら皆殺し、というのを繰り返してきたのはキリスト教の方であって、イスラム教じゃない。そして、20 世紀を通して、このキリスト教に属する文明が、共産主義と自由主義というイデオロギーの拡大合戦をやって、世界中に災禍をもたらし続けてきたのではないか。さらに冷戦終結後は、自らの理想達成のために、世界中に自分の理想を「グローバリズム」という形で押しつけ続けてきたのは、正にアメリカではないか!
イスラエル・パレスチナ問題に代表されるアメリカの中東戦略の非道さは、この雑誌の書き手達も認識していて、「まあ、アメリカもちょとやりすぎたかなー」と言ってはみるものの、すぐに「でもテロは絶対許せない!!」と言う。ああいう無茶なテロを誘発したアメリカの中東政策の非道さは、問わない訳ね。アメリカの中東政策の非道さに抗議して、イスラム過激派によるテロはずーっと行われてきた。今回はそれの大規模なものでしょう。だから今回の事件は、やはりアメリカと中東の間の問題とみるのが常識的な線で、そうなれば一方的にイスラム側の非を問うのは、あまりにアメリカ贔屓の偏ったやりかただろう。
副島隆彦の提唱する、チャルマーズ・ジョンソンの「ブローバック理論」によると、今回の事件はアメリカへのブローバック。つまりアメリカの自業自得だ。だから日本はそこに首を突っ込むべきではなく、逆に首を突っ込むと、巻き添えをくって酷い目にあう。なにもアメリカのために、日本が苦しむ必要はないのだ。それなのに、アメリカに協力しろ! 自衛隊を出せ! 今回は金だけじゃなく、人的貢献を! とか叫ぶ連中は、日本の国益を損ねるアメリカの手先。つまり国賊だ!
今回の事件とそれに対する対応をみて、アメリカの手先リストが作れるかもしれませんねー。まあ、中曽根なんかは分かりやすいけれど、例えば民族問題についてよく書いている東大教授の山内昌之とか、ああ! お前もか! って感じで、新たな発見があります。んー、でも石原慎太郎が、今回の事件の事を「第 2 のパールハーバーだ!」と言いまくるアメリカ人に対して、「いや、これは民間人を狙ったものだから、広島・長崎の原爆投下と一緒だ!」と言い返した話は面白かったですけどねー。
- 付記
- 図書新聞にて可能涼介の小説の連載がはじまりました。興味のある方は御一読を。