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 Diary 2001・3月12日(MON.)

偽善系 II

 日垣隆の新著『偽善系 II』(文芸春秋)を購入 。店が暇だったので、パラパラとつまみ読みする。この「偽善系」というタイトルはちょっとどうかと思うが、内容は相変わらずよい。まだ一部をつまみ読みしただけだが、その中で特に面白いと思ったのが、第三章「日本人の死に方・考」。これは日本人はどのように死んでいっているのか、を考察したもので、確かにこういった考察はあまりみたことがない。非常に面白い目のつけどころだと思う。

 この考察の枕として、520 名が死亡した御巣鷹山の航空機墜落事故を奇跡的にまぬかれた男が(友人と食事をしていて乗り損ねた)、家に帰って無事を家族とともに喜びホッと一息、お風呂にはいったら滑って転んで頭を打ち、死亡した、という話を載せている。普通の人はこの話で驚く。飛行機事故を免れた男が、風呂場で転んで死ぬとは、と。しかし、この年、この飛行機事故以外の航空機事故で死んだ人は 10 名。まあ、特におおきな事故がないかぎり、毎年の航空事故死者数はそんなものだ。それに比べ、風呂場や床で転倒して死んだ人は 1482 人もいるのだ。平成 10 年の統計によると、航空事故死亡者 22 人、風呂場や床での転倒死者 3053 人、浴槽内での溺死者 3178 人。とにかく日本人は溺死者が多いという。

 浴槽での溺死、といえば、私はミュージシャンの江戸アケミを思い出す。確か私が大学生の時のことだが、すごくビックリしたのを覚えている。浴槽で溺死するなんてさすが江戸アケミ、と妙な感心のしかたをしたものだが、年間 3000 人以上も浴槽で溺死しているとは! 私もよく浴槽内で寝てしまい、危うく溺れそうになることがあるのだが、まさか風呂では死なないだろうと、深く考えないできた。これからは気をつけようっと。

 私の親戚のおじさんも、海で溺死している。最初は浅瀬で岩の間に足がはさまって抜けなくなり、みんなで笑っていたのだが、そのうち潮が満ちてきて、だんだんと水位があがってきた。みんなも真剣になってきて抜こうとするのだが、どうやっても抜けない。こうなれば足を切断してでも命だけは助けよう、とまわりが決意した時には波が激しくなっていて、そもそも近づくのも困難になっていた。それでも息子や娘は必死に近づこうと泳ぎ寄り、波にたたきつけられて負傷。そのままおじさんは海のそこに没していったのだった…。嘘のようだが本当の話。

 こういった話を読むと、人間は簡単なことで死ぬものだなあ、私もいつ死ぬかわかったもんじゃない、まあ長生きはできないだろう、などと考えてしまうが、日垣隆は最後にこんな話も書いている。

 日本人の平均寿命は世界一。また簡易生命表によれば、同じ年に生まれた日本人のうち 10 人に 1 人が亡くなるのは、男性で 60 歳、女性で 69 歳だという。それでいて日本は世界一の生命保険大国で、国民一人当たりの保険金額はオーストリア人の 17 倍、イタリア人の 50 倍。これは競馬の単勝より大胆なギャンブルだという。やはり。生命保険ってどうにも胡散臭くて好きになれないと思っていたのだ。

 う〜ん、まあ、人生いろいろですね。って今日もこんな話でお茶を濁しました。すんません。

小川顕太郎 Original:2001-Mar-14;