怒られる人
今日もオイシンは、ソウルサバイバーズのフライヤー見本を作って持ってきた。これがまたなんというか、師範代が「例えばこんな風にだな…」と言いながら紙にチョコチョコっと書いたやつの、引き写しのようなしろもの。師範代もがっくりと肩を落として、「ほんまにアホやなあ…」と、言葉も出ないようす。そこにクラタニくんがやってきた。
クラタニくんも、どう言って良いか分からないようだったが、それでもタイムリミットは今週中だし、困った様子で「とりあえず前より良くなっているから…」と言葉を濁してビールを飲む。重い沈黙がその場を圧する。たまりかねた師範代が「仕方ない」と呟き、紙にサラサラと図案を描いてオイシンに渡す。「この通りにやりなさい」「あ、有り難うございますー! やったーイエー!」と小踊りするオイシン。「ほんまのアホや…」とみな嘆息する。
お客さんで、一緒にきた人にやたら怒られている人がいた。どうやら仕事仲間、それも先輩・後輩関係か、上司・部下の関係らしく、「お前、やる気あるのか! ええ、どうなんだ!」と何度も詰問されていた。しかし、このセリフは詰問というより、いじめに近い。どう答えたって、さらに怒られるに決まっているからだ。怒られていた人は、しばらく無言だったが、あまり何度も詰問されるので、とうとう「あります」と答えてしまった。すると案の定、「それなら何で***ができない? ***がわからないんだ!」と、次々と例をあげて、さらにいじめ(?)に拍車がかかってしまった。
それを聞いていて、ふとオイシンを怒ってみようと思い立った。オイシンを呼び、今までのソウルサバイバーズのフライヤー見本を前に並べ、「師範代があんなに懇切丁寧に教えてくれているのに、まったく上達していない!」とやりはじめた。オイシンは神妙な顔をして聞いている。「一度注意した事を何度でも間違える、いったいやる気があるのか! ええ、どうなんだ!」と怒鳴ると、オイシンはキョトンとした顔で、「へ? やる気? あるに決まってるじゃないですか」と不思議そうに答える。うーん、こりゃあかん。そういえばオイシンは文脈が読めないんだった。そんなオイシンのために一句読もう。
オイシンの 足の長さに 嘆息す
小川顕太郎 Original:2001-Jan-26;