病院に行く
朝起きて、そのまま病院に行く。そこで急性胃腸炎と診断され、点滴を受けることを薦められる。点滴には 1 時間半ほどかかるとのことで、私は九州への出発を控えているトモコをそんなに待たすわけにはいかないと考え、点滴を断った。そこで点滴の代わりのぶっとい栄養注射と、菌を殺す薬の服用ですますことになったのだが、私が「仕事が控えているので」という理由で点滴を断ったからだろうか、お医者さんに「自分の健康が大事か、仕事が大事か、よく考えて下さいよ!」と何度か苦言を呈されてしまった。
しかしこれは無意味な苦言ではないだろうか。普通の人は、健康を犠牲にしてまでも仕事の方が大事と考えているわけでもないし、また仕事を犠牲にしてまでも健康の方が大事と考えている訳でもないだろう。誰しもこのふたつに適当に折り合いをつけながら生活をしている訳で、この場合、私がつけた折り合いが「点滴は必要なし」というものだった、という事だ。という事はつまり、私が医者の示した〈専門的〉な判断を退け、私自身の〈素人〉判断を採った事に対して、医者が不満を述べた、というのがあの苦言だったのだろう。なるほどね。
トモコを九州に送り出し、薬を飲んで、ベッドの上で微睡みながら一日過ごす。夜中の 12 時前に、気分も幾分よくなったことから店に行く。早めに店を閉めてしまえ、と思っていたのだけれど、店に着くとほぼ満席で賑わっている。なんだ、これは、どういう事だ? ワダくんに訊けば、ついさっき、突然にお客さんが押し寄せて満席になったのだそうだ。それまでは、あんまり暇で「映画の題名しりとり」を皆でやっていたそうだ。
私はカウンターに座って、胃の中の殺菌をするんだ、と言ってショウヘイくんに作って貰ったマティーニを飲みながら、忙しく立ち働く人々をボウッと眺める。そこにクラタニくんがやってきたので、『わたしは真悟』が如何に素晴らしいマンガであるか、を力説して語ったりする。
家に帰って、薬を飲み、早々に眠りに就く。
小川顕太郎 Original:2001-Jan-12;