京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

HOME > diary > 00 > 0901
 Diary 2000・9月1日(FRI.)

真実の言葉

 トモコが突然、これぞ真実の言葉って何がある? と尋ねてきたので、私は咄嗟にジョージ・オーウェルの『動物農場』への序文「THE FREEDOM OF THE PRESS」を思い浮かべ、記憶があやふやだったので本棚から本を探してきてその一節を読んだ。

「If liberty means anything at all it means the right to tell people what they do not want to hear. 」

 私はおよそ「自由」という事に関して、これほど力強く真実をついている言葉を知らない。私の「自由」概念の理解の基底には、この言葉がある。シンプルで分かりやすく力強い。正にオーウェルの真骨頂である。

「ふーん」とトモコはつまらなさそうに言って、床に転がっていたが、「私にとってはこれね」と言って、手に持っていた本から一節読み上げた。

「『おしゃれな人』とは、どんな人でしょう? それは美しくありたいと思う心が、ことさらに強い人のことです。」

 私はガーンと頭を殴りつけられた気持ちになった。これぞ真実の言葉ではないか!! 追い打ちをかけるように、トモコは次々と「真実の言葉」を吐いていく。「『美しい』と『醜い』とを較べれば『美しい』方がいいのにきまっています」「美しい暮らしは不精では出来ない」等々。この真実がざくざく詰まった本は、中原淳一の『しあわせの花束』(平凡社)。美しくなるため、幸せになるための、実践的なアドバイスが満載してある素晴らしい本だ。

 これはオーウェルにも共通する事だけれど、確乎としたスタイルを持ち、周りに流されずに自分の信じるものに地道に殉じた人間だけが吐ける、真実の言葉がここにはある。およそこういった人間しか、真実の言葉を吐きえないと、私は思う。

 中原淳一といえば、あの瞳の大きな少女の絵が浮かんでくるが、実をいえばあの手の少女趣味は私にはよく分からず、あまり意識した事はなかったのだけれど、この本で中原淳一に対する認識を一新した。中原淳一、偉大なり。

 税別で 1524 円。たったこれっぽっちで「真実」に触れられるのだから、安いものだと思う。お薦めです。

小川顕太郎 Original:2000-Sep-2;