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 Diary 2000・10月5日(THU.)

エリン・ブロコビッチ/
コフィー

 祇園会館に『エリン・ブロコビッチ』を観にいく。先日観たソダーバーグ監督の『イギリスから来た男』が非常によかったので、そのソダーバーグが『イギリスから来た男』の次に撮ったこの映画を、たまたま祇園会館で『スリーピーホロウ』と 2 本立てでやっていたのをこれ幸いと、観に行ったのだ。

 この『エリン・ブロコビッチ』は、『イギリスから来た男』のような凝った撮り方・編集はしていない。非常にオーソドックスな撮り方をしている。それで、間然する所のない作品となっており、ソダーバーグの力量の程を思い知らせる。ストーリーも、実話に基づいているとはいえ、個人がその個人的魅力と他人に対する共感能力を武器に巨悪に立ち向かうという、極めてオーソドックスなもの。こういった話を、説得力をもって語る事が出来るのは大したものだ。私は唸りました。ジュリア・ロバーツも本当に魅力的でファンになりそうだ。

 この作品は、昨今流行りの「実話もの」である。「実話もの」の陥りがちな欠点のひとつに、作品の説得力のなさを、「これは実際にあった話だから」という所でごまかしてしまう、といったものがあるが、この『エリン・ブロコビッチ』は勿論そんな事はない。それどころか、「実話もの」であるという事が、一種の批評となっている感がある。

 つまり、グローバリズムが席巻する現代社会においては、個人の活躍する余地などドンドンなくなっていっている。この作品のように、個人が大企業の悪を撃つ、などということは、ほとんどあり得ない話、夢物語のように思える。しかしながら、「この作品は実話に基づいている」のだ。映画の最初に、真っ黒な画面地に「この作品は実話に基づいている」と出て、最後にはその報告が画面にバーっと出て終わる。その事によって、このような話をあり得なく思わせる現代社会を、批評しているのだ。やはり、作品を支えるのは批評性ですな。

 その後、三条のブックオフに行き、100 円均一棚で、ずっと探していた本を見つける。『俺の人生どっかおかしい』萩原健一著(KK ベストセラーズ)。手が震えましたね。今日は良い日だと、うきうきしながらそこを出る。

 夜はみなみ会館で待望の『コフィー』を観る。もう、最高! この作品も、実は個人が社会の巨悪に立ち向かう、という作品だ。おまけに、主人公が女性で、自らの美貌を武器に使う点も同じ。一見すると、コフィーはあくまで個人的な復讐の念から行動し、エリンは社会的な正義感から行動しているように思える。しかし、コフィーにも黒人という巨大なマイノリティを搾取する社会に対する怒りがあるし、エリンも仕事を通して個人的な自己尊厳を回復しようとしている。つまりこの 2 作品は同じ話なのだ。が、完全に社会復帰しハッピーエンドに終わる『エリン・ブロコビッチ』と、復讐は成し遂げたものの全ては虚しく、哀愁を漂わせつつ終わる『コフィー』との違いは、やはり白人映画と黒人映画の違いだろう。

 それにしてもパム・グリアーはかっこ良すぎ。しびれました。ううん、やっぱジュリア・ロバーツよりパム・グリアーだよな。

 クラタニくんも会社帰りに観に来ていたので、帰りは一緒にご飯を食べにいく。クラタニくんは、本日の昼食時に、「王将」で(「天一」だったかな?)ハンドタオルをあてて貰ったそうだ。「いやあ、今日は良い日ですわ」。確かに、今日は良い日だね。

小川顕太郎 Original:2000-Oct-7;