刺青
みなみ会館で行われている「宮川一夫特集」中の 1 本、増村保造監督の『刺青』を観に行く。それなりに面白かったのだが、あまりにもテレビ時代劇風だったのに吃驚。66 年の作品だし、会社は大映なので、ここら辺がテレビ時代劇のもとになったのかもしれないが、よく分からない。
原作は谷崎だが、話は大幅に変えてある。というか、無垢の美少女が女郎蜘蛛の刺青を入れることによって男を食い殺して肥やしにする美しい妖女となる、という増村好みの意匠だけを借りて、あとは勝手に話を膨らませたという感じだ。原作では、美しい妖女となった事を暗示して終わるのだが、この映画はその後実際に次々と男を食い殺していく様を描く。まあ、こういった悪女に男が翻弄されて滅んでいく話は面白いにきまっているので、それはいいとして、私が気になったのは、原作にはないこの美しい妖女の恋人のことだ。こいつがまた冴えない奴で、当然女が悪の道に堕ちていくに従って、自分も堕ちていって殺人なんかもするわけだが、その事をいつまでもうじうじ悩んで「自首する」とかぶつぶつ言っているのだ。そして始終なにかを抑圧しているような鬱陶しい暗い表情なのだが、こいつを見ていて誰かを思い出した。そう、ネコだ!
ネコも最近はずうっと鬱陶しい暗い表情をして「試験が」「勉強が」とかぶつぶつ言っているのだ。そんなに忙しいのならもう来なくていい、と言えば、「いや、そんな」とか言って慌ててひきつった笑いを浮かべる。私が「人生の階段を踏み外せ」とアドバイスして、「1 年ぐらい留年しろ。少なくともその覚悟ならそんなにオタオタする事ないだろう」と言えば、「そうですねえ…」と、なんとも煮えきらない答だ。いつも眉間に皺を寄せて、猫背で、溜息か独り言を言っている。みているこっちが暗い気分になるので、そんなにウジウジしているのなら、もう京大にでもどこにでも帰って欲しいのだが、映画では愛想を尽かされた恋人はそうと知ると「くそう! 死んでやる! お前も道連れだ!!」とか叫んで、女に襲いかかるのだ。ああ、やだやだ。ネコもそういったとち狂い方をするタイプだ。ほんと、そうなる前に紙袋に放り込んで蹴りまくろう。
ヤマネくん来店。三条の「ブルーベアーカフェ」が潰れた話をしていて、私が「1 階で道に面しているという最適の場所で、結構人気もあって頑張ってもいたのに潰れるなんてちょっとショック。六階にあるオパールは大丈夫か」というと、「大丈夫ですよ。馬鹿は高い所が好きだから馬鹿が集まってきますよ。僕とか」と答える。なるほど! オパールに馬鹿が集まるのは高い所にあったからか! それでオイシンとかタケチさんとか、ねえ…って、そんな訳ないか。馬鹿も馬鹿でない人も、京都系も非京都系も、パリ化推進派も反対派も、様々な人々が集まるカフェオパール。これからもよろしく。
三馬鹿兄弟三男のタケチさん来店。キユさんと待ち合わせてネオンのイベントに行くそうだ。三馬鹿兄弟の長男、オイシンも来店。次男は来なかったが、ベッチ、ババさんは来店。う〜ん、集まってる集まってる。
そういえば今日はイマエくんが久しぶりに来店した。元気そうで何より。こういった知性派ナイスガイもオパールにはやってきます。さあ、明日も大集合だ!
小川顕太郎 Original:2000-Jan-9;