Diary 2000・12月7日(THU.)
股旅
梅田でウエナカさんに夕飯を御馳走になる。その時にウエナカさんから聞いた話。
ウエナカさんは現在自動車教習所に通っている。ちなみにウエナカさんが自動車教習所に通うのはこれで 2 回目。学生の時に一度は卒業証書まで手に入れたのだが、期限内に試験を受けなかったために、免許証は手に入れられなかったのだ。30 歳を過ぎてからの再挑戦。それはまあよいとして、今ウエナカさんが通っている教習所は非常に小さい所らしく、教習生の送り迎えをするバンの運転手、事務の人、教官を、全ての人が兼ねているそうだ。
それだけではない。先日、教習中にウエナカさんがキーを車の中に入れたままロックしてしまった時。
- 教官 A
- 「しゃあないなあ。おーい、スペアキー持ってきて!」
- 教官 B
- 「あかん、あかん。それスペアキーあらへんで」
- 教官 A
- 「なんでや」
- 教官 B
- 「その車、ナカハラの弟のや」
- 教官 A
- 「そうか! そら困ったなあ。しゃあない、ナカハラに断ってマイナスドライバーでこじ開けるか」
というような事件もあったそうだ。こういった家庭的(?)な教習所で、ウエナカさんは日々怒鳴られながら頑張っているという。健闘を祈りたい。
家に帰ってビデオで市川崑の『股旅』を観る。ショーケンと小倉一郎と尾籐イサオが主演の時代劇。昭和 48 年の作品。自由を求めて家を出たが、自由の実態の厳しさに翻弄されつくされていく天保時代の若者の姿を、昭和 40 年代の若者の姿を投影させながら描いた作品と、みた。
なんといっても良いのはショーケンで、ショーケンはオーディションを受けてこの映画に出たと語っているので、ショーケンを想定して書かれた訳ではないはずなのに、ショーケンを想定したとしか思えない程のはまり役。義理と人情では、義理の方が重い渡世の仁義に反して、ショーケンはあくまで人情を重んじる。それも親子の情、といった自然を偽装したものではなく、友情というあくまで人工的な情を重んじる。ショーケンこそ倫理の人と言えるだろう。
終わりのあっけなさに、しばし唖然とする。
小川顕太郎 Original:2000-Dec-8;