遠くへ逝きたい
〜オイシンのロンドン紀行 その 6
ロンドン最後の夜の巻
地下鉄クラファムコモン駅のあたりにあるという夏目漱石記念館へ。
この辺りは黒人の住民が多く、お洒落な街ではあるが、危険な街でもあるとのこと。しかし僕たちが行った時間帯は昼間で、駅を出たところには大きな公園もあり、なんだか長閑な様に思える。
漱石記念館はチェイスという住宅街の中の家の一室を使って、恒松さんという方が個人で運営されているところで、イメージしていた所謂記念館みたいなのとは違いました。入場料は 5 ポンド（学生 3 ポンド）。なぜここに漱石記念館があるのかイマイチ謎だったのですが、館長の恒松さんのお話を聞いて納得。記念館の真向かいの家が実は漱石がロンドンで住んだ 5 番目の部屋だったのです。本当はその部屋に記念館を作りたかったそうですが、買うには高くて断念されたそうです。室内には様々な資料が展示されていたのですが、その中でも漱石のお孫さんの講演の記事があり、それによると外国人嫌いだと思っていた漱石が、娘には外人の誰々のところに嫁に行かないか？ としきりに勧めて「やーだ」と断られたりしていたりしたのが可笑しい。関川夏央の漫画もおいてありました（何故か 5 巻だけ）。
ピカデリーサーカスに戻り、ミュージカルを見る前に腹ごしらえをする。サワから話を聞いたロンドン 1 バッドサービスで有名な中華料理店 WON KEI というのにネタのつもりで行ってみる。ワンタン麺 400 円で、今まで食べた外食で一番安い。これならあまりバッドサービスでも文句言えんかなという感じ。
黒人と白人のカップルと相席する。彼らは中華にコーラの組み合わせ。うーむ。白人の彼女が茶碗を指して「これ何入れるの？」と聞く「中国茶だ。俺はいらない」と黒人の彼。テーブルの上にある辛い調味料を彼女が悪戯でかけようとすると「ファッキュー」と彼が言う。おー、ファッキューを初めて生で聞いた。微妙に嬉しい。しかし直後彼は彼女にしばき倒されているのに笑ってしまった。彼はいい奴のようで特に言葉を交わしたわけではないですが、和やかな雰囲気でよかった。さて味ですが、別に美味しくもないが、むちゃくちゃまずいわけでもない。小腹は満たせたし、お茶に砂糖は入っていなかったので、まあそんなに酷くないやん。と、思っていたら、最後の最後にやってくれました！
会計の時、ボーイの兄ちゃんが間違えてお釣が 1 ポンド足りなかったので、サワが指摘するとボーイの兄ちゃんはうんざりした表情で 1 ポンドを皿の上に置き、指でコインを弾き駒のように回し「これでええやろ」という顔をする。僕は唖然としてしまい。サワは「やっぱり」という顔で笑っている。サワはもう慣れたそうです・しかしこれ、バッドサービスというかケンカ売ってるやん。
ブツクサ言いながら店を出て、ユミちゃんと合流し、会場のシェークスピアグローブシアターへ向かう。ここは昔あったシェークスピアシアターを再現したもので、一番安い 5 ポンド席はステージ前で立ち見。安い席でも接客は WON KEI の 1000 倍くらいよい（別に根に持っている訳ではないのですが）。ミュージカルなんて 10 年ぶりだなーと思ってたら、始まってみれば演劇でショック。ミュージカルの英語ならゆっくりとしているので分ると聞いていたわけですが、普通に英語喋られたら何も分りません。そもそも歌になっていたら分ったかどうかも謎なのですが、まあ雰囲気だけでも楽しんでおくかと分らないながらも見ておく。1 時間ほどもすると日も落ちてきて寒くなってきて、分からず立っているという状況が辛くなってくる。
結局ユミちゃんは休憩時間でダウンし途中で帰宅。サワと二人でひたすら耐える。話が現代風にアレンジされているので、知っている話と平行して別のストーリーも進んでいる。かなりそっちに時間を割いている感じで、そちらのほうが笑える話になっているようで辛い。僕らの知っている話の部分が終わって、もうちょっとで終りだな、と思ってからがまた長い！ 観客も「これで終わったー」といった感じの拍手をするので、なんども気が抜けてしまうのにまだ終わらない。うー寒い。
結局 3 時間弱、耐えに耐えて終りまで立ち通しました。話は分らなかったけど、劇の終りのときなど拍手と歓声がすごく劇場全体が一体感に包まれてちょっと感動的でした。3 時間も耐えたら何がなんでも感動しなけりゃやってられません。
帰りは例のミレニアムブリッジを渡って地下鉄の駅へ。正面に見えるセントポール大聖堂がライトアップされていて美しい。寒いので走って、橋を歪ませながら帰る。
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