NANA [☆☆☆☆]
Text by BABA夢を歌う。夢に恋する。そして、二人は夢を奏でていく。ババーン! 矢沢あい原作、なんでも女子に絶大な人気を博するマンガ(私は未読)、『アベック・モン・マリ』『約三十の嘘』の大谷健太郎監督で映画化。
さて私、予告編で聞いた(予告編上映時、目をつぶっているのです)以下のセリフに、「これは、鑑賞するに猛烈な痛みをともなう映画ではあるまいか…?」との予感を抱いていたのです。そのセリフとは、
「あたしは運命とかかなり信じちゃうタチだから、あたしたちの出会いは運命だったと思うんだ。笑ってもいいよ。ナナ」
というものです。なんか変ではないですか?
「私たちの出会いは運命だと、思う」ことの理由として、「私は運命を信じるタチである」と述べられたわけですけど、それは「運命」の信憑性を補強するものでなく、「自分は何でも運命と思ってしまう非合理思考の持ち主」と白状しておるわけで、逆に「運命」の嘘くささを助長している、と思うのです。そんなことをいう奈々ちゃん、とてつものう痛いキャラなのでは…? と、少々鑑賞するに勇気を必要としたのでした。
東京へ向かう電車で運命的に出会った奈々とナナ、二人は東京で、運命的な再会を果たします。…再会しなければ何も話が始まらないと申せばそのとおりなんですけど、私はこの再会シーンをもって、この『NANA』に、「ザ・ベストご都合主義ムービー オブ・ザ・イヤー」賞をさしあげたい気分でいっぱいになりました。「運命」is another name of「ご都合主義」。
そんなことはどうでもよくて(ホントにどうでもよくてすいません)、決してマンガを小馬鹿にする意図はないのですけど、いかにもマンガ的・ご都合主義的展開の数々に、私はやっぱり少々の頭痛を催したのですが、そんな頭痛を吹き飛ばしたのは、奈々=宮崎あおい、ナナ=中島美嘉のバチグンの好演でございます。
そもそも大谷健太郎監督、『アベック・モン・マリ』見てもわかるように、俳優さんの素(す)とも思える自然な表情をとらえ、情動の流れをつくるのがうまい人、『約三十の嘘』は超ご都合主義的展開に萎え萎えでしたが、今回の『NANA』、宮崎あおい+中島美嘉の表情というか、感情の発露が、つねに私の予想を裏切り上まわって素晴らしく感動的である! …と一人ごちました。
例えば、こんなシーン。ナナが初めて聞いた曲に、即興で適当な歌詞をつけて突如テーブルに上がって歌いだす! …気でも狂ったか!? と思わざるをえない、すさまじいシーンですが、そこに、それを見つめる宮崎あおいの表情がインサートされると、最高にリアルな情感に満ちた場面に変貌するのであった…。
ナナが彼氏の上京を見送って、駅のホームで泣き崩れぬる、なんていう類型的な描写も、これはすこぶる美しい映像ですな、と感心してしまいました。
宮崎あおいのキャピキャピと、中島美嘉のクールかつ男前な雰囲気の対比が気色よろしく、わけても中島美嘉、ときおりセリフまわしのヘタさ感じる場面なきにしもあらず、しかしそれを補ってあまりある存在感。
中島美嘉は現役ミュージシャンの方だそうですが、やっぱり歌手の方は、矢沢永吉しかり郷ひろみしかり、沢田研二しかり松田聖子しかり、存在感というか表現力がグンバツでございますね。
また、中島美嘉の着こなしが板についており、赤いワンピース(ヴィヴィアン・ウエストウッド?)の、似合っているのか似合っていないのかよくわからない感じがすこぶるカッコよく、さすがでございますね。ってよく知りません。
惜しむらくは、いまだ連載継続中のマンガ原作だからなのか、どうにも中途半端な尻切れトンボ感ただよう結末、何となれば適宜、「奈々の回想モノローグ」が挿入されますが、その語りは未来から現在を大いに反省する内容、それは奈々がキャピキャピした人格を一変させるにたる不幸な出来事にであうことを予感させるもの、しかるに映画はほぼキャピキャピのまま結末をむかえてしまうわけで、そのへんは原作コミックをお読みくださいということかしらん?
それはともかく、奈々とナナの友情物語に私は何度も目頭を熱くしました。また、『アベック・モン・マリ』同様、大谷監督はダメ男のダメッぷりを描かせたら天下一品。同じスタッフ+キャストで続々と続編を製作していただきたいな、とバチグンにオススメする次第。
☆☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)
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Comments
投稿者 baba : 2005年09月09日 09:32
以下、修正しました。
映画『NANA』公式サイト
http://www.s-nana.com/←マンガの方の(?)サイトでした。
映画版公式サイト
http://www.nana-movie.com/
で、昨日より原作コミックス読み始めております。面白いでーす。