シンデレラマン [☆☆]
Text by BABA心で語り継がれる《奇跡の実話》。ババーン!
極貧生活の老頭児(ロートル)ボクサー、ジム・ブラドックが、ひょんなことから現役復帰、ついにはチャンピオン戦に挑戦するというお話。
監督はロン・ハワード、『ラブ IN ニューヨーク』(1982年)、『スプラッシュ』(1984年)、『ザ・ペーパー』(1994年)、『遥かなる大地へ』(1992年)、『アポロ13』(1995年)などなど、コンスタントにまあまあ面白い映画を撮る監督さんです。
前々作『ビューティフル・マインド』(2001年)もちょこっと面白かったのですけど、その『ビューティフル・マインド』、実在の数学者ジョン・ナッシュを描く「実話にもとづく物語」と言いながら、原作を読んでみると映画は「全然、事実と違うやんけ!」とツッコミを入れざるを得ないものでした。
今回の『シンデレラマン』も「奇跡の実話」とおっしゃいますが、どこからどこまで事実なのか、眉にツバつけ懐疑する心もて見なければなりません。
そうしますと、大恐慌で失業者が1千万人以上という当時のアメリカ、「極貧負け組ボクサーがチャンピオン戦に挑戦する」という物語、まず「大恐慌で失業者が1千万人以上」というのは本当にそうだったのか? そもそもアメリカが本当に存在したのか? …ってそこまで疑うのはどうかと思いますが、ジム・ブラドックはホントにこんなに絵に描いたような貧乏だったのか? 「シンデレラマン」として売り出すためマスコミが捏造(でつぞう)した過去なのではないか? とか、いちいちひっかかってしまう私は心の貧しい男です。
そんな自省はどうでもよくて、典型的・類型的な描写の連続、さらに少しやせたブリジット・ジョーンズの演技が少々頭が痛くなる感じで、リアルなところはどうだったのか? という疑問が常に残るのであった。
なぜジム・ブラドックは再デヴューを飾ることができたのか? 映画を見る限りそれは「宝くじ」的な幸運です。再デヴューめざしてトレーニングを続けていたわけではない。
対して、似たような負け組ボクサーのチャレンジを描いた『ロッキー』は、トレーニングシーンを丹念にモンタージュして、フィクションではあってもリアリティがありました。
対して『ミリオンダラー・ベイビー』は? 『ミリオンダラー・ベイビー』の場合は、負け組の私に今日から役立つ「人生訓」を示します。
それは、「タフなだけではダメ!」「自分の身は自分で守れ!」「自分の生死は、自分でコントロールする!」というものです。ジム・ブラドックの人生から我々は何を学べるというのか? 「常に家族のために戦え」ですか? それは大切なこととは思いますけど、私には、ジム・ブラドックは「タフなだけ」、たまたま「シンデレラマン」に選ばれたから、結果として家族を守ることができただけなんじゃないかなぁ、と思ったのでした。骨折しながらも試合をする彼は、「自分の身は自分で守れ!」ということもできてませんし。
詐欺的予告編と、『ビューティフル・マインド』における実話の改竄ぶりに警戒心を抱き、心の貧しいレビューになってしまいましたが、ほぼ満員の劇場のあちらこちらですすり泣きの音が絶えることがなかったことじゃ。
圧倒的多数の観客に「やっぱ実話なのがすごいよねー」と大きな感動を与えてますし、試合シーンも迫力あるのでオススメです。
☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)
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Comments
投稿者 miumiu : 2005年09月29日 12:00
こんにちは、いつもBABAさんのレビュー楽しみにしています。
ブラドックがいくら恐慌でも短期間であそこまで貧乏になるのも解せないし、老体にムチ打ってわざわざ復帰するからには実際は相当にハングリーな人だったのだろうと思うのに映画の中じゃ最後まで聖人君子ですね。
ポール・ジアマッティが出てくる場面はことごとく面白く、対してレネーが出てくる場面はことごとく退屈でした・・・がらんどうのアパートで対峙する場面では見事に食われてたような>ブリジット。
ラッセル、張り切りすぎて肩骨折しただけあって試合シーンは確かにサマになってるな、とそこは感心しました。
投稿者 baba : 2005年09月29日 13:54
miumiuさん、コメントありがとうございます!!
ポール・ジアマッティ、『アメリカン・スプレンダー』→『サイドウェイ』と来て、ついにラッセル・クロウと共演、出世しておりますよね。上り調子の俳優さんにはオーラを感じます(適当)。
『シンデレラマン』、ジアマッティ視点で語ればよい映画になったのに…と思います。
店主の日記の方にもコメントしていただきましたが、北関東にお住まいなんですね。京都におこしのさいは、カフェ・オパールよろしくです。
それと、これからもコメントぜひよろしく!
投稿者 miumiu : 2005年09月30日 08:15
お返事ありがとうございます!
私の両脇の女性が共に泣いてたので、なんだか自分がおよそ情に欠ける女のようでちょっと複雑な気持ちになりましたけど・・・飲んだくれ友達のパティ・コンシダインはイイと思いました。「イン・アメリカ」が好きだったので、こういう大作に出てると嬉しくなります。
この週末は東京に帰省して「バッドアス!」「理想の女」「ハッカビーズ」「ふたりの5つの分かれ路」を観てきます。
実はいきなり来月中旬から静岡に引っ越すことになり、早速静岡の映画環境を調べています。
OPALさんには確か2001年のGWに1度お伺いしたことがあるのですが、またお邪魔した際はよろしくお願いします!
投稿者 baba : 2005年09月30日 13:26
そうなんですよ。割とお客さんが入っていたのですが、あちこちすすり泣き、「よかったよかった」「泣けた泣けた」と感動の嵐で、まー気持ちはわからないでもないんですけど、「監督の思うツボ」にはまり過ぎちゃうか? と思ってしまうのでした。
パティ・コンシダイン!
どこかで見た顔と思ったら『イン・アメリカ』のお父さんだったのですね! …なんかよくわからないうちに退場してしまって残念なことでした。
『バッドアス!』!!
京都でもぜひやっていただきたいものです。
静岡!!!
引っ越し、何かとたいへんかもしれませんががんばってくださいー。
カフェ・オパールもぜひまた。