将軍の娘
エリザベス・キャンベル
陸軍基地内にて「将軍の娘」が死体で発見、事件を捜査するうちに意外な真実が…ということだが、大方は予想通りに展開するので人物が錯綜するミステリーが苦手な人にもオススメだ。
『G ・I ジェーン』同様、米軍が女性の入隊を認めたことが生むドラマだ。動物的な本能をむき出しにすることを強いられる軍隊において、この映画で描かれるような事件は殺人事件に至るものは少ないにしても、結構起こっているのではなかろうか。男女同権の世の中ゆえ、あらゆる職業で性差別を撤廃するというアメリカ政府、陸軍の姿勢は賞賛すべきであろうが、軍隊に色濃く残る「軍人はマッチョな男の職業」という意識を残したままでは軋轢が生まれるのは当然だ。
『G ・I ジェーン』で、デミ・ムーアは自らもマッチョになることで戦いを挑んだが、この映画のエリザベス・キャンベルはセックスを武器に戦いを展開する。結局非業の死を遂げ、また彼女と共闘するゲイ・セクシャルの軍人も自殺する。戦略があまりに冒険主義的に過ぎるとはいえ、哀れである。
ジョン・トラボルタの追及によって真相が明らかになるが、軍隊の男社会のシステムを揺るがすことなく闇へと葬り去られる。この映画は軍隊という舞台を設定し、マチズムに対決するアンチ・マチズムの敗北を描いているのだ。果たして他国民を差別することを精強さのエネルギーとする軍隊において、性差別をなくすことが可能なのか? を問う映画と言えよう。
…って何を書いているのか自分でもよく分からなくなってきたので映画不リーク的なところに話に戻すと、脚本に『マラソンマン』、『プリンセス・ブライド』、『ホットロック』などのヒネリを効かせた脚本で知られるウィリアム・ゴールドマンが参加している。どの辺でその才能を発揮したのかは見抜けず。『ゴースト・アンド・ダークネス』、『目撃』なんかも往年に比べるとパッとしない出来で、ゴールドマン、もっとガンバレ! と私は言いたい。
ジョン・トラヴォルタは「この事件の解決には 3 つある。正しい解決と誤った解決、そして軍隊流の解決だ」などという通常の正義が通用しない軍隊の中の警察官というお堅い役柄であっても、ただのお調子ものにしか見えず、さすがだなあ、と妙なところで感心。その他、ダドリー署長をはじめ、いちいち書かぬがゴージャスなキャストである。
パッとしない映画であるが、ただワンシーン、驚くべき死にざまを見ることができる。いや〜、余りに唐突で吃驚しました。
BABA Original: 1999-Nov-13;