実はパンク。
「キャメロット・ガーデンの少女
「キャメロット」で「ガーデン」で、おまけに「少女」とくれば、誰でもファンタスティックでメルヒェンな世界を想像するでしょ。パンフレットの紹介記事を見ても「10 歳の少女と青年のちょっと危険な関係 衝撃的フェアリー・テール」とか「ファンタスティックな‘奇跡’の物語」などのアタマがかゆくなるような字句が踊り、なんともボンクラな映画が予想される。のだが。
実はボクの学校のナチュラル・ボーン・パンクな先輩が、「おもしろかった」と言っていたので、密かに期待していたのだ。映画の根底に流れるのはまさしくノー・フューチャーな感覚でした。いやはや。
「キャメロット・ガーデン」ってのはケンタッキー州の高級住宅地の名前である。街の入り口にはディズニーランドっぽい城壁を模した、アタマが腐りそうなゲートがある。そこに越してきた、「急に森が開けたところにバビヤガのすみかがありました」とか自作のおとぎ話をブツクサつぶやいている少女と、芝を刈るためにキャメロット・ガーデンに出入りはしているが貧乏人なるがゆえ町はずれの森のトレーラーハウスに住んでいるお兄ちゃんが、出会う。原題は「Lawn Dog」…芝生の犬なんだから、少女うんぬんも大事だけどこのお兄ちゃんの話も大事なんだな。
街の人間ってのが、少女の両親をはじめ俗物野郎ばっかりで、現実に幻滅しちゃってる(はずの)少女はブツブツおとぎ話をつぶやきつづけ、お兄ちゃんは芝を刈り続ける。登場人物はほんの数人だけ。物語の構造的には「まがい物の平穏さに適応できない者たちがはじき飛ばされていく」または「違う価値観を持つ者どもを排除するプロセス」というアメリカン・ニューシネマや、ティム・バートンの『シザーハンズ』的なものでして、決してフニャラフニャラした映画ではない、とボクは思うのだが、どうか。
8 月 10 日まで京都みなみ会館にて上映中。
Original: 1999-Aug-02;