妖怪大戦争
愛と平和の大冒険ファンタジー! ババーン! …って、もう少しマシな宣伝文句はないものか? って、そんなことはどうでもいいのですが、1968年大映映画『妖怪大戦争』をリメイクというか、「妖怪がたくさん出てくる」ところだけ受け継いだ、ほとんどオリジナルの新作でございます。
油すましやヌリカベ、砂かけ婆などのメジャーどころから、よく知らないマイナーな妖怪が山をなして大挙出演、あ、こんな妖怪も出てる! みたいな、妖怪好きの方なら大喜び、妖怪デザインは『妖怪百物語』やオリジナル『妖怪大戦争』のテイストを残しつつアップツーデートな印象、しかも“くだん”は『遊星からの物体X』ばりに気色悪いかと思ったら、ぬいぐるみ丸出しの“すねこすり”とか、特殊メイクとか、CGとか、色んな技法で妖怪が作られており、この統一感の無さ、ゴッタ煮なところが祝祭感+うさんくささをかもしだして、よろしゅうございました。
水木しげる・京極夏彦・荒俣宏・宮部みゆきがプロデュースチーム「怪」を結成、ストーリー、考証、妖怪デザインやら何やら口出しされたようで、この映画の肝と思われる、「そもそも妖怪とはどのようなものか?」がしっかりしておりグーでございます。
とはいえ、「妖怪に関する考察」をしっかり導入してしまったおかげで血湧き肉躍る「大戦争」を描けなくなってしまったようです。妖怪は、「人間的な復讐やら争いはしない、戦争はしない」ということで、『妖怪大戦争』なのに妖怪は戦争しないという、看板に偽りあり状態でございます。
しかし、そこはさすが、人を食ったトンチにかけては定評ある(ないか?)三池崇史監督、戦争しない妖怪が、悪の化身・魔人加藤をどのようにして打ち破るのか? という難問に見事に一ヶの解答を与えており、私は深い感銘を受けたのであった。
それはともかく三池監督、この『妖怪大戦争』を「ご家族向け娯楽作」として成立させつつ、微妙にそれを踏みはずして異化というか脱構築というか、私のような実直・素直な映画ファンから、ちょっとスレた映画マニアまでお喜びいただける作品に仕上げております、が、真面目な人はずっこけるかも知れませんね。
そんなことはどうでもいいのですが、三池監督作品はこれまでも、ジャンル・ムーヴィーでありながらそこを踏みはずしてしまうところが多々あって、普通に「映画の完成度」を上げることを拒否しているように見受けられます。
『殺し屋1』『DEAD OR ARRIVE 犯罪者』『サラリーマン金太郎』なんかは、そこらへんがすこぶる面白く、逆に『アンドロメディア』『着信アリ』『ゼブラーマン』はそこらへんが残念な感じでしたが、今回は三池監督のそういうなんだかよくわからないところが「妖怪」という題材とうまくマッチした、と、私は一人ごちたのでした。
主演・神木隆之介くん、妖怪にビビりまくる前半、お見事なリアクション演技、最高に気色よいです。これくらい怖がってくれると本当に嬉しいものなのです。ってよくわかりませんが、ビビりのリアクション演技では、『宇宙戦争』のダコタ・ファニングを超えたかも? 西のダコタ、東の神木と並び称したい。その他、有名俳優さんが誰が誰だかさっぱりわからない扮装で登場したり、というのも三池監督らしくちょっと意地悪な感じ、オススメでございます。
☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)
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