10ミニッツ・オールダー
イデアの森
知の森では、この 10 分が永遠になる! ポカーン。
それはともかく、圧倒的ハイクオリティ作揃いの『人生のメビウス』と違って、玉石混淆といった印象の「チェロ編」。邦題は『イデアの森』。ってよくわかりませんが「きのこの森」みたいなものでしょうか?
なんでやねん、と自分でツッコんでおきますが、こちらは、
- ベルナルド・ベルトルッチ(『1900 年』)
- マイク・フィギス(『リービング・ラスベガス』)
- イジー・メンツェル(『スイート・スイート・ビレッジ』)
- イシュトバン・サボー(『メフィスト』)
- クレール・ドニ(『ガーゴイル』)
- フォルカー・シュレンドルフ(『ブリキの太鼓』)
- マイケル・ラドフォード(『イル・ポスティーノ』)
- ジャン=リュック・ゴダール(『万事快調』)
と、『人生のメビウス』より渋めのメンバーで、何が面白いのかさっぱりわからないのも混じっているのですけど、一本の映画としてみた場合、『アダプテーション』の脚本学校講師氏がおっしゃったように、ラストが重要、最後に観客をアッと言わせれば映画は成功するのであった。
大トリのゴダール作品が滅法面白く、っていつものゴダール節炸裂ですけど、「愛の/最後の瞬間」「歴史の/最後の瞬間」「永遠の/最後の瞬間」…など字幕が 1 分ごとに示され、『フォーエバー・モーツァルト』『小さな兵隊』などゴダール自身の旧作や、パゾリーニ『奇跡の丘』の一場面が 1 分づつ 10 ヶ挿入される…ってやってることは『映画史』と一緒じゃん! とツッコミながらも圧倒的に気色よく、結局、15 名監督中いちばん手抜きですけど、一分間の断片には膨大な時間がこめられており、って「時間がこめられている」って何? 時間とは「こめられる」ものなのでしょうかね? 昔の作品をツギハギした手抜きでも「時間がこめられている」と言っていいのか? などなど「時間」に関する考察を色々巡らしてしまう出来ではないかー? って、よくわからないので普段のゴダール作品ならうとうとしてしまうところ、10 分なんで大丈夫、息をつめて見てしまいました。
というか、『ロゴパグ』『ベトナムから遠く離れて』『アリア』など、ゴダールといえば「オムニバスで手を抜く監督」と私は認識しているのですが、今回も最もお手軽に仕上げた印象でありながら、「時間」について考えてきた時間は他の誰にも負けないぞ、まかせとけ! という余裕が感じられるのであった。
一方、私にとっていちばんつまらなかったのは、クレール・ドニ作品で、ジャン=リュック・ナンシーという哲学者が、列車で前に座った女の子に延々哲学談義をするという…って、ゴダール『中国女』と一緒のパターンじゃん! まさしく「列車で、ワケのわからない話をしてくるオジサンと 10 分間同席してしまう」という苦痛を味わったのでした。
最初のベルトルッチ作品は、「永遠も、一瞬の夢」みたいな仏教の説教風というか、トンチ小咄風の奇妙な味わいあり、ベルトルッチの東洋趣味もだいぶんこなれてきたようでよい感じ、『人生のメビウス』に入っていてもおかしくないくらいです。ってよくわかりませんね。
最初ベルトルッチ、最後ゴダール、最初と最後がやたら面白いし、合い間の作品もヴァラエティに富んでいて飽きず、飽きて寝てしまっても 10 分たったら新しい話になるのでこういうオムニバスは疲れた忙しい現代人に最適の映画形式と言えよう。ってそんなことはどうでもよくて、『人生のメビウス』に比べると見劣りしますが、これはこれで、「時間」について著名監督多数が考察してみたら、そんなことはどうでもいいことが見えてきた! って感じでオススメです。店主は見逃されたそうなので、遅ればせながらレビュー書いてみました。
☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2004-Mar-16;