パイレーツ・オブ・
カリビアン
呪われた海賊たち
ふと監督ゴア・ヴァービンスキーのフィルモグラフィを眺めれば、『マウスハント』『ザ・メキシカン』『ザ・リング』、節操がないというか何というか、監督の傾向と対策は普通 3 本くらいで見えてくるものですが、どうにも掴み所がなく、企画物をホイホイ引き受ける節操なしヴァービンスキー最新作、製作はジェリー・ブラッカイマー(『60 セカンズ』『パール・ハーバー』)、しかも特撮は、CG を導入して映画をつまらなくしまくっている ILM と、もうワクワク! どう転んでも面白くなさそうなのですが、結論からいうと面白かったです。映画を面白く見るには、最悪の事態を予想して鑑賞に臨むのがコツですね、と一人ごちたのでした。
まずジョニー・デップが素晴らしいです。帆船のマストにつかまっての初登場シーンからして素晴らしい。掴みはバッチリ、トンチが効いております。J ・デップは、自分の子供に見せられる映画に出たいとか、幼少の頃あこがれた海賊を演じられるとかで大奮闘、「当時の海賊は、今でいうロックスターでしょ?」と、独自のワケわからん解釈の下、海賊キャプテン・ジャックを爽快に演じております。芸風はキース・リチャーズを参照しているようで、目の下には黒くクマを描き、いつもラリってラリラリしているのですが、窮地に追い込まれるや見事鮮やかにトンチを発揮して切り抜けるというキャラ。
その他ところどころトンチが効いているのは、脚本のテッド・エリオット & テリー・ロッシオ(『シュレック』『アラジン』など)の功績でありましょう。かつて盗んだ財宝の呪いで、海賊たちは決して死なない身体になっております。同時に生の喜びも失ってしまってこりゃたまらん、呪いを解く金貨を求めて大暴れ、みたいなストーリーなんですけど、なんだかんだあってクライマックス、呪われた海賊同士のチャンバラとなり、海賊ハッと気づいて「不死身の者同士がチャンバラしたかて、決着つかへんやん!?」とセルフ・ツッコミを入れる、などいい感じです。自分たちがいかに阿呆な映画を作っているか? という自覚があるのですね。その他にもいいセリフ満載でございます。
また、特撮は例によって CG バンバンですが、これが凄いことになっております。海賊たちは、月の光に当たると骸骨になり、月光からはずれると生身に戻ってチャンバラを繰り広げる、すさまじく手間がかかってそうなシーンは一見の価値あり。また、個々の骸骨が役者の身体をもとにデザインされており、CG になってもキャラが立っているのもよいです。その他、戦艦と海賊船が横付けしあって大砲をブチかましまくるという壮大なスペクタクルシーンもありながら、やっぱり演出・編集がヘタでいまいちスペクタクル感に乏しく、アクションになると激しく眠くなるのですけど、見どころ多数。もうちょっと状況説明が上手で切れ味鋭い演出なら、上映時間も 90 分以内に収まって(2 時間 32 分もある)傑作になり得たのですけど、所詮ヴァービンスキー、勿体ない限りでございますね。が、仮にテリー・ギリアムなんかが監督していたら……製作費オーヴァー、予定通り完成しなかったでしょうし、ヴァービンスキー、コストパフォーマンスの高さで重宝がられているのかも知れません。どうでもいいですが。
その他、『ロード・オブ・ザ・リング』のレゴラスことオーランド・ブルーム、『ベッカムに恋して』の背の高い女子キーラ・ナイトレイも好演、ディズニーランドの名作アトラクション「カリブの海賊」風のシーンも何ヵ所かあったりして、とにかく J ・デップの意表を着く演技をお楽しみください。意外にオススメ。
☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2003-Sep-17;