カンパニー・マン
低予算ながらも大ヒットを記録した『CUBE』のヴィンチェンゾ・ナタリ監督が、満を持して、かどうかは知りませんが、5 年ぶりに放つスタイリッシュサスペンスである! ババーン!
お話は、産業スパイとなったモーガン・サリバン氏(誰?)が巻き込まれるハラハラドキドキ、なんでもヴィンチェンゾ監督はヒッチコックとキューブリックが大好きで、今回『北北西に進路を取れ』や、『影なき狙撃者』(1962 /ジョン・フランケンハイマー監督。ヴィデオ題は『失われた時を求めて』というワケのわからないものになっております)などを参照しつつ、『時計仕掛けのオレンジ』『シャイニング』を髣髴とさせるスーパースタイリッシュな映像がバチグンにカッコよく、思わずうたた寝しそうになったのでした。って、眠いんかい! …って感じですけど、ゴダールの『アルファビル』風に、実際にある建物を近未来に見立てて撮っており、現代建築がお好きな方もお楽しみいただけるのではないでしょうか。
そんなことはどうでもよくて、お話は、「見失われた自分探し」って感じ? 新人ブライアン・キングによる脚本は、「なんでこれが P ・K ・ディック原作とちゃうねん?」と問いつめたいくらいディック的なお話、というか似たような話があったような気がしますがおいといて、元来『トータル・リコール』など、ディック的なお話は映画に最適じゃあなかろうか、と思っているのでこりゃメチャメチャ面白そうなんですけど、どんでん返しに次ぐどんでん返しがどんでんどんでんどうでも良くなってくるのはどうしたことでしょうか。ってか、ラストに近づくにつれて爆笑シーンの連続。というか、結構怖かった『CUBE』の印象があるのでちょっと構えて見てしまってたんですけど、思い起こせば最初から笑えるシーン満載。
意外な展開のはずが、意外でも何でもないのは意外でした。ディック的な面白さというものは、「見ている世界がガラリと様相を変える」瞬間、パラダイム・シフトにあると思うのですけど(適当)、最初から、ずっと不安感を醸し出してしまってはダメだと思うのです。映画が始まってすぐに大どんでん返しされても、それはどんでん返しの機能を果たさないというか。やはり、ジックリ小一時間くらいはどんでんを我慢してもらわないと。この辺はヒッチコックのようにある程度キャリアを積まないと勘所がわからないのでございましょうね。「ヴィンチェンゾ、まだまだ若いな」と一人ごちた。
とはいえ、リニアモーターエレベーター(?)、ヘリコプターとか、映像・美術がバチグンにカッコよく、ほとんどモノクロに近い映像にパッとルーシー・リューだけ色が付いている、などの技巧も気色よろしい。『CUBE』みたいに怖かったら嫌だな、という方も全然大丈夫、笑える作品ですのでご安心を。ヴィンチェンゾ頑張れ! 次回作に期待。オススメ。
☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)
(BABA)