クイーン・
オブ・ザ・
ヴァンパイア
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』で、トム・クルーズが演じたカリスマ吸血鬼レスタトが現代に甦り、「アイ・アム・ヴァンパイア・レスタトである!」とカミングアウト。ロックンローラーになって公然と活動開始。何せホントの吸血鬼なものですから、ゴス度にかけては人後に落ちず、話題を呼んで大ブレイク。しかし、吸血鬼一族は、「ちくしょう、レスタトめ、ヴァンパイアとは日陰者なるぞ!」と逆恨みしてレスタト暗殺に乗り出す。一方、レスタトの歌声は伝説の女王アカーシャを甦らせてしまってさあ大変! ババーン! …というお話。…って、なんか凄い話ですね。ロマンチックにも程があるというか。
さて、ここでは「現代のゴス的生き方とは何か?」が問われています。ゴス少年による無差別殺人「トレンチコート・マフィア事件」後のゴスはどうあるべきか、という問題が提起されている。
吸血鬼とは、ゴスそのものに他なりません。ゴスとは、「生ぬるい日常」「アットホーム」「ポップ」「消費社会」への反逆ですから、社会のつまはじき、日陰者、マイノリティ(被差別者)にならざるを得ない。ゴス王子レスタトは、日陰者生活にストレスを感じており、ロック業界に身を投じる。しかし、「アイ・アム・ヴァンパイア・レスタトである!」と凄んでみても、ロック巨大産業の方が一枚上手で「ちょっと変わった売り方をする阿呆」としてしか扱われない始末。
「日陰者ゴス」に対する批判者として登場するのが女王アカーシャです。アカーシャは、原初のゴスの象徴である。「ゴス・ファッション」でなくても、もっともゴス的なオーラを放っています。本来のゴスとは、ファッションではなく、生き方・思想なのである。
アカーシャはレスタトと結ばれる。「貴方は王様! 大手を振って太陽の下も歩けちゃうのよ!」。しかし、レスタト、元々は小市民なので、リアル・ゴスのアカーシャについていけないものを感じてしまう。アカーシャにとって、一般人は奴隷、家畜でしかない。ところがレスタトは、一般人にシンパシーを感じており、無差別に餌食にはできない。小市民の本性を捨てきれない生ぬるいヤツです。アカーシャを R & B シンガーのアリーアが演じているのが象徴的ですね。黒人から見れば、ゴスなんて生ぬるいことはなはだしいのであるぞ。
一方レスタトは、ゴス・オタクのイモ姉ちゃん(太め)に「オラも仲間に入れてくんろ!」とつきまとわれている。レスタトは悩む。うーむ、アカーシャはラジカル過ぎるっちゅうねん。結局、イモ姉ちゃんと生きることを決意、アカーシャを裏切って集団でなぶり殺す。「アカーシャ殺し」とは、ゴスから反社会性を奪い取ることなんですね。お前ら、よい子のゴスはファッションとして楽しんでください、世間と適当なところで折り合って、コンサバティブな嫁さんを見つけてください、とのメッセージがこめられているのである。
ま、そんなゴスのことはどうでもよくて、なんといってもアカーシャ=アリーア登場シーンが最高です。というか、このシーンだけがバチグンの素晴らしさ。ここだけでも DVD を買う価値があるかも?
レスタト役のスチュアート・タウンゼントも、臆病者小市民、リベラル・ヒューマニストな吸血鬼という難しい役どころを好演。爆笑シーン満載でオススメです。
☆☆☆★★(アリーア好演で☆ 2 ヶおまけ)(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2002-Jan-18;