映画・クレヨンしんちゃん
嵐を呼ぶアッパレ!
戦国大合戦
前作『オトナ帝国の逆襲』が「映画秘宝」誌 2001 年度ベストワンに選ばれるなど、評価の機運が高まりつつありますが、私またはヤマネ氏が「面白い! 面白い! 面白い! っちゅうてんねん!」と騒ぎまくっても、誰も見に行ってくれない(ショボーン。オイシン氏は見に行ったそうですが、トイレに行っていてラストシーンを見逃した、とのウワサ)シリーズ「クレヨンしんちゃん」映画版最新作です。
今回、しんちゃん一家が戦国時代にタイムスリップ!! …って、いかにもつまんなさそうな設定なんですけどー、これがまた圧倒的な完成度の大感動作なのである。泣くで。
シリーズを担当する原恵一監督は、前作から「自分の好きなように作っていい」と卒然と気がついたそうで、前作では「甘美な過去を振り返るでなく、しみったれた現実を受け止めて生きよ。家族がいれば人生を輝かせることができる」とのアクチュアルなテーマを描き出しましたが、今回は、「我々はなぜかくもフニャフニャなのか? 我々は欲望を開放させたままでいいのか? 我々が失ってしまったモノは何か?」を問う試みです。
春日家の家臣・井尻又兵衛は戦場にあっては「鬼」と呼ばれる剛勇無双ぶりを発揮、しかし女子には滅法弱く、幼なじみの廉姫(れんひめ)に恋心を抱くも、自由恋愛は御法度の時代なのもあって、もう全然ダメダメ、という昔なつかしいキャラクター造型でして、この井尻又兵衛の生き様を通し、日本人が忘れているモノ=サムライ的生き方を提示します。井尻又兵衛がいい! 黒澤明の時代劇または宮崎駿+高畑勲のアニメに出てくるような、爽やかなヤツなんですね。
親への敬意は無し、節度無し、家族愛だけは旺盛なしんちゃん一家がサムライ的「義」に目覚めていく姿に、私は、呆然と感動したのでした。一方、井尻又兵衛+廉姫の側も、しんちゃん一家から現代の価値観を学び、生き方を変化させていく様はスリリングであり、いや、まったく感服つかまつりました。
そんなことはどうでもよく、戦国時代の合戦ぶりが圧倒的なダイナミズムをもって再現されているのが素晴らしいです。城の籠城戦が丹念に描かれ、中世アクションでは『ブレイブハート』『ジャンヌ・ダルク』を凌ぐ圧倒的な迫力! …って、もはやこれは『クレヨンしんちゃん』なのか? とツッコミも入れたくなるほどですが、合戦がリアルであればあるほど、そこに現れるしんちゃんのおかしさがグッと際だつ、ということで、ゴールデンウィーク最大、バチグンのオススメ作。ってゴールデンウィーク終わっちゃいました。5 月 10 日まで、京都宝塚劇場で上映中。
☆☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2002-May-08;