オーシャンズ11
『アウト・オブ・サイト』『エリン・ブロコヴィッチ』『イギリスから来た男』『トラフィック』と、名作・傑作連発のスティーブン・ソダーバーグ監督の新作です。
ラスヴェガスのカジノ、地下金庫から現金 1 億 6 千万ドルをスマートに強奪しようっちゅう「犯罪サスペンス」でして元ネタはフランク・シナトラ主演 1960 年作品『オーシャンと十一人の仲間』。
シナトラ版は、シナトラのお友達総出演、元空挺部隊の仲間が現金強奪作戦を繰り広げるみたいなー、そういうアメリカ映画的な「気心の知れた男集団」描写が見どころだったんですけど(小学生の頃にテレヴィで見たきりですけど)、今回のメンバー、首謀者:柴俊夫、じゃなくってジョージ・クルーニー、参謀:ブラッド・ピット、若者:ジミー大西、じゃなくってマット・デイモン、道化:ドン・チードル、老人:カール・ライナー(…って、誰も知りませんか? スティーヴ・マーチン主演『四つ数えろ』などコメディ映画の名監督)…と、まあ、それなりに小粒感漂う豪華キャストでして、シナトラ版みたく普段から仲良くやっててそれが映画にもにじみ出て、みたいな雰囲気はなくって、なんでお前ら一緒に映画出てるねん? 「11」言わんと、5 人くらいでよかったんちゃう? と思わぬでもなく。
そうそう、シナトラ版に出演していたアンジー・ディッキンスンや、ヘンリー・シルヴァが、リメイク版ボクシング試合の観客席に見かけられたり。ってどうでもいいですね。
で、演技アンサンブルの面白さはあんまり無く、犯罪サスペンスのくせにスリルもなくサスペンスもなく手に汗握ること一切なく、呆然と犯罪が進行、粛々とどんでん返しがあって、「はー、そうですか。で?」…って感じで圧倒的なつまらなさ、…かと言うとそうでもないのは、ただひたすら、ソダーバーグの映像がカッコいいからなのですね。
こういうゲーム的な物語はソダーバーグには似合わぬな、と思いつつ、中身がない分、映像のバチグンのカッコ良さばかりに目がいって、ひたすら、「うーん、カッコいいナー」とうなり続ける。演出の機微というか、「細部に神は宿る」というか。ディテイル以外はどうでもいい映画でしょうけどね、撮影もソダーバーグが担当してまして(クレジットは変名)、ぴしぴしと映像が決まっていくのはホントに気持ちがいいものです。至福の瞬間。
加えてジュリア・ロバーツがちょっと猫背気味の、いかにもラスヴェガスにいそうな、くたびれ感を出しており、「うーん、やっぱりジュリア・ロバーツ凄いかも!」と、またもうなりました。ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツのエピソードだけ、リアリティがプーンと漂う。ジョージ・クルーニー曰く「ヤツは、キミを笑わせるかい?」…くくーっ! 泣かせる! …ってよくわかりませんね。
まあ、なんにせよ、ソダーバーグの圧倒的な語りの巧さ、「もーたまらん!」って感じの音楽のクールさを体験しないのは、人生の大きな損失かと。ソダーバーグ最高!
BABA Original: 2002-Feb-19;