ROCK YOU!
[ロック・ユー!]
ブライアン・ヘルゲランド監督、待望の新作です。…って誰? えーっと、『陰謀のセオリー』『L. A. コンフィデンシャル』などバチグンの脚本を手がけた人です。メル・ギブソン主演『ペイバック』で念願の監督デヴューを飾る! …が、撮影途中で監督を解任され、30 %が撮り直しになったとか。事情はよく知りませんが、なんせメルギブ、自身も監督として評価が高いものですから、ついつい自分で演出しちゃったみたいです。あ、そんなことがありつつ『ペイバック』は面白いんですけど。
監督を首になって、ブライアン・ヘルゲランドは卒然と悟ります。「ビッグスターの出る映画はコリゴリだ…。いつかビッグになってお前らをコキつかってやるぜ!」(憶測)…と、いうわけでついにヘルゲランド製作・脚本・監督、大スター不在のフリーハンドを得ての新作は、平民青年が貴族階級を「ロック」――揺り動かさんとす、痛快成り上がり物語なのでした。原題は“A Knight's Tale”――「ある騎士の物語」…面白くも何ともないですね。
時代は中世、従者ウィリアムはひょんなことから騎士の腕試し、当時大人気の「ジュースティング」に、身分を偽って出場してあっさり勝利を収め、「こいつぁいいや」と猛特訓を積んだり、ヨーロッパ・チャンピオンを目指しつつラヴロマンス、父親との再会などアレコレ。
「ジュースティング」とは、馬に乗った騎士が猛スピードですれ違いざまに槍で突き合う、という競技です。槍=ランス(Lance)、主人公が名乗る偽名が「ウルリック(Ulrich)」、主人公が身につける鎧はカスタムメイドの軽量化追求モデルという具合でヘルゲランド、さてはロードレース好きか? と憶測してみたり。あ、ワケのわからない妄想です。
中世ヨーロッパのコスチュームプレイですが、冒頭ではクイーンの“We Will Rock You”に合わせて観客が手拍子したりとさながらアメフトか大リーグの雰囲気だったり、舞踏会でブイブイ踊るはデイヴィッド・ボウイーの“Golden Years”でだったり、って感じでセンス無しの中途半端なモダンさが面白いです。
で、『カンタベリー物語』の実在の作家チョーサーが登場したりとか、さすがヘルゲランドって感じのバチグンのストーリーテリングの巧さなんですが、結局「のし上がるにはスポーツで頑張るといいですよ」みたいな結論なんですね。貴族階級を「ロック」するわけではない。いまいちピンと来ないのですね。何故、今この話? 例えばこれが主演:メル・ギブソンが中世のニセ騎士を演じる! とかですともっと面白くなったと思うのですよ。
左様、大スターとは存在するだけで映画に今日性を帯びさせることが出来るのですね。いや、出演者みな頑張って良い感じなのですが、こういうのはやはりスターを必要とするのではないか? 今回あえて大スターを一切使わないっちゅうヘルゲランドの決意(憶測ですが)が裏目に出たのでは? 私は「ともかくヘルゲランド、次回作期待してるぜ! 頑張れ!」と暗闇でソッと呟いたのでした。
ドカーンと槍が砕け散る「ジュースティング」シーンもなかなかの迫力、ちょっとイギリス風味のユーモアもあってオススメです。
BABA Original: 2001-Nov-02;